第76話 素材集め その1
ソファでダラダラしているアストレイアが暇そうな声を出す。
「せんぱぁ~い。暇で~す。何か一発芸をしてくださ~い!」
「い・や!」
対面に座って勉強しているスプリングが視線を上げることなく即座に拒否する。あと少しで宿題が終わるところなのだ。
「えぇ~! 面白いこと言ってくださいよ~!」
宿題も勉強も終わっているアストレイアがぐったりとソファに身体を預けて駄々をこねる。構ってくれなくて少し拗ねている。
スプリングが最後の問題に取り掛かり、適当に言葉を返す。
「布団が吹っ飛んだ」
「うわぁお! 面白くな~い!」
「アルミ缶の上にあるミカン」
「ゼロ点です」
スプリングが問題から顔を上げて、アストレイアの水色の瞳を見つめる。
「レア、愛してる」
「っ!?」
急な愛の囁きにアストレイアが固まった。その隙にスプリングは問題に視線を移し、最後の問題を解いていく。サラサラと問題を解いていく。
「よっしゃ! 終わった!」
スプリングが終わると同時にアストレイアも硬直が解ける。
「先輩卑怯です! 卑怯です卑怯です卑怯ですぅううううう!」
アストレイアがスプリングに抱きついてくる。彼が勉強をしていたため、くっつくことができなかったのだ。アストレイアは彼の身体に顔を埋める。
「むぅ~~~! 勉強が終わったなら私を可愛がれ! 甘やかすのだ!」
「はいはい」
「ふにゃ~」
スプリングに抱きしめられ、甘やかされているアストレイアは身体も顔も蕩けきっている。幸せそうな彼女にスプリングは微笑む。しばらくアストレイアを甘やかして可愛がる。
子猫のように丸くなっているアストレイアに問いかけた。
「なぁ、レイア」
「んみゅ?」
可愛らしい声を上げてアストレイアが顔を上げる。その様子に悶えたスプリングは思わずもっと抱きしめて可愛がった。そして、またしばらく二人はイチャイチャし続ける。
イチャイチャしている最中に、アストレイアが先ほど問いかけられたことを思い出した。
「あっ・・しぇんぱい・・・さっき何か言いかけませんでしたか?」
頭を撫でられて嬉しそうなアストレイアが聞いてきた。スプリングは言われてから思い出した。
「そうだった。レイア、こうしてストレス発散するのもいいけど、ちょっと暴れたくないか?」
「暴れる・・・はっ! もしかして、私とベッドの上で暴れたいんですか!?」
「どうしてそうなる! モンスター討伐に行かないかってことだよ! どうしたらそんな発想になるんだ! 欲求不満か!?」
「欲求不満です!」
アストレイアが即答する。そしてスプリングを睨みつける。あまりの迫力にスプリングは床に正座する。アストレイアは彼の前で仁王立ちする。
「誰かさんのせいで欲求溜まりまくりですよ! ヘタレている人のせいです! 刺激するなとは言いませんが、少しは発散のお手伝いをしてくださいよ! 私一人だけでは追いつきません! 最近、本当に襲ってやろうかと本気で考えているんですから!」
「あっ・・・ごめんなさい」
スプリングは深々と土下座する。綺麗な土下座だ。アストレイアのこめかみがピクリと動く。
「・・・ごめんなさい?」
「い、いえ! 誠に申し訳ございませんでした!」
「次のお家デートは容赦しません。欲求解消を手伝ってもらいます。連絡するんで予定空けといてください」
「わかりましたぁ!」
スプリングは平伏する。土下座しなれている様子だ。よろしい!、というアストレイアの声を聞いてスプリングは顔を上げた。そして、彼女に促されるままソファに座る。太ももの上にアストレイア座ってきた。スプリングと向き合うような座り方だ。ぎゅうっと抱きしめてくる。
「ふぅ。大声出したら疲れました」
じゃあ出さなければいいのに、という言葉をスプリングは飲み込む。自分のせいで彼女は大声を出したのだ。また再び怒られるのは目に見えている。アストレイアの背中を優しく撫でた。
アストレイアがスプリングの頬に頬ずりしてきた。彼女の柔らかな頬と温かな体温が伝わってくる。
「しぇんぱいのほっぺはふにふにです」
「レイアはもちもちふわふわだな」
「でしょでしょ! お手入れ頑張ってますから! でもやっぱり
「やめろ! 数日前のことを忘れたのか! 大騒ぎになるぞ!」
スプリングが必死で止める。
数日前、昼休みにスプリングとアストレイアは一緒にお弁当を食べた。その時に、無意識にあ~んをしたり間接キスをしたり、抱き合うような格好になって大騒ぎになったのだ。今でも噂になっている。
アストレイアが頬ずりしながら言った。
「やだなぁ~。冗談ですよ~! 流石に恥ずかしすぎます。するとしても二人きりなのを確認してからしますよ~」
「・・・本当か? 前科があるぞ」
「あれは先輩と母が悪いです! 勝手に私の写真をやり取りしているなんて!」
「いや、最初はレイアが俺の卵焼きをおねだりしてきたからだと思うが?」
スプリングはアストレイアにジト目を向ける。彼女はスーッと目を逸らした。
「さ、些細なことです」
「じーーーっ」
「それで? 一体どんな写真を貰ったんですか?」
「あっ、誤魔化した」
「先輩白状してください!」
話を誤魔化したアストレイアはスプリングの頬を両手で挟み込む。至近距離でスプリングの紅い瞳を見つめる。
スプリングはアストレイアに弱い。すぐに白状してしまう。
「・・・・・・・・・レイアの寝顔写真です」
「いつの!? 小さい頃!? それとも最近のですか!?」
「・・・赤ちゃんの頃から最近のものまで、です」
「・・・・・・・・・・」
アストレイアの顔から感情が消え、手を動かし、何やら画面を操作し始める。誰かに電話をかけているようだ。
「あっもしもし? ちょっとお願いがあるんだけど。お兄さんの寝顔写真を赤ちゃんの頃から最近の写真まで欲しいの」
「っ!?」
スプリングは声を上げて止めようとするが、彼女にキッと睨みつけられてその動作が止まる。スプリングはアストレイアに調教済みなのだ。
「・・・・・・え? 可愛い写真もくれるの? ありがとう! 楽しみにしてるね! またお願いするかも・・・・・・うん、じゃあね!」
アストレイアが通話を終える。
「なぁ、今の相手って・・・」
「もちろん夏稀ちゃんです! 先輩の写真を送ってくれるそうです。いやー楽しみですね」
「おぉいいいいいい! 何してんだ!?」
「母にも見せてあげましょう! きっと喜びますね」
「やめてくれ~」
スプリングの声はアストレイアに届かない。アストレイアは楽しそうに彼の首に両手をまわす。
「うふふ。先輩、可愛い顔してますね。もっとイジメたくなっちゃいます」
「・・・・・俺、今めっちゃストレスあるんだけど」
「それは大変ですね! モンスター討伐で解消します? それとも、私でストレス発散します?」
ニヤニヤとアストレイアが揶揄ってくる。しかし、彼女は彼の瞳の奥にある黒い感情に気づいていない。スプリングはアストレイアの背中に回していた手に力を入れて、彼女の身体が離れないようにする。そして、彼女の唇にキスをした。
「っ!? んぅ~~~~~~~~ぷはっ! きゅ、急に何するんですか!?」
「ストレス発散」
「あっ、ちょっと、まって、んんぅ~~~~~~~~!」
再びスプリングはアストレイアにキスをする。彼女がポカポカと叩いてくるが気にしない。彼女の柔らかな唇の感触を楽しむ。アストレイアが離れそうとするがスプリングに固く抱きしめられているため離れることができない。
「ぷはっ! ちょっと、んんっ、強引、んふぅ、すぎ、んぁっ!」
「レイアが自分で言ってたからな。レイアでストレス発散した後、モンスター討伐で発散して、最後にまたレイアで発散するから覚悟しとけ!」
「ひゃっ! 先輩、目が本気なんですけど! そんな目で見つめられると私、堕ちちゃいますからぁ! ダメです、ダメですってばぁ! んんっんぅ~~~~~~~~~~~~~!」
アストレイアは容赦なくキスをして唇をふさがれる。
珍しく積極的で荒々しいスプリングにアストレイアは抵抗する気が起きない。むしろ、これを待ち望んでいた。
アストレイアはしばらくスプリングに身をゆだねるのだった。
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作者のクローン人間です!
読者の皆様には申し訳ありませんがストックがなくなりました。
これから超不定期更新になります。
ゆっくりとお待ちください。
これからもよろしくお願いします。
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