第49話 異端審問 その3
異端審問はまだまだ続く。
「次に審問したい組織はどこかな?」
「次は我々『近衛騎士団』が行う!」
『マドンナファンクラブ』の会員も頷いて許可を出す。『近衛騎士団』たちが立ち上がり、熱のこもった声で叫び始める。
「藤村春真! 我々は『
「はあ、それで?」
春真は心底どうでもいいと呆れている。
「先ほど貴様は姫様とひとつ屋根の下で暮らしていると言ったな?」
「それがどうした?」
「殺す!」
屈強な『近衛騎士団』
「ど、同志たちよ! 落ち着くのだ! あっ! だめぇ! おい! だ、誰が服の中に手を入れてる! 触るのやめろぉ~! 撫でるなぁ~! そ、そこ敏感なのぉ! や、やめろぉ~」
「もう、お婿に行けない・・・」
なぜか名残惜しそうに離れる『近衛騎士団』から解放された
「さて、話を続けようか」
『近衛騎士団』ドックが唇を舐めて、座り込んでいる
「姫様を解放しろ!」
「解放って言われてもどうしたらいいんだ? 雪の家は隣だし、ご両親も家を空けることが多いから寂しくて泣きだすぞ」
「大丈夫だ! その時は我ら『近衛騎士団』が姫様を慰める!」
「うまくいくかな? 絶対雪はまず俺に泣きながら聞いてくるぞ。なんで酷いことするのかって。そうなったら『近衛騎士団』に関わるなって言われたから、と俺は雪に言うぞ」
「うぐっ!」
「そしたら雪はお前らのことをどんな風に思うかな? あぁ! お前たちは別に嫌われてもいいんだったな。まぁ、信用もされないが・・・」
「うぐっ! べ、別にそれでもいいのだ! 魔の手から姫様を救い出せればそれでいい!」
『近衛騎士団』は雪に嫌われたことを想像したのだろう。ガクガクと震え、涙を流している。
「魔の手ねぇ。俺は何もしてないぞ」
「嘘をつくな! ひとつ屋根の下で何もしていないわけがない! 姫様の小さな体に欲望をぶつけているのだろう!?」
「そんなことしていない。俺は雪のことを妹だと思っているからな」
「何だとっ!? 義妹だとっ!?」
『
「『近衛騎士団』諸君! 君らに姉や妹はいるかな?」
「わ、私は妹が」
「姉が一人」
「・・・姉が一人、妹が二人」
ドック、グランピー、バッシュフルが順に答えた。
「ふむ。君たちはあの『
春真はまだ騒いでいる『
「なるほど。君は妹に手を出す変態ではないと」
「理解が得られたようで何よりだ。俺は雪のお世話係のようなものだからな。料理人や執事だな」
「ふむ。我らの仕事仲間のようなものか。我らは護衛を行い、貴様は姫様の身の回りのお世話か」
「そうだ。だが知っているか? 雪はとても恥ずかしがり屋だということを」
「もちろん知っている! あの恥ずかしがる様子がたまらん!」
『近衛騎士団』の三人が陶酔したような顔をしているようだ。目出し帽で目と口しかわからないが。
「そうかそうか。じゃあ、これも知っているな。雪は大勢に自分が姫のように祀り上げられるのが大嫌いだということも」
『近衛騎士団』たちはガクガク震える。
「な、なんだとっ!? いや、も、もちろん、しし知っているぞぞぞ!」
「声が震えて動揺しているようだが?」
「き、気のせいだ!」
「ふむ。雪はそんな人物たちと喋ることはないからな。そういえば、君たち『近衛騎士団』のメンバーの中には雪と喋った人物はいるかな?」
「・・・」
「いないようだな。雪に全てバレているようだ。とことん嫌われているな」
『近衛騎士団』たちが立ち上がって怒鳴る。
「我々は秘密組織だ! 姫様に知られていないだけだ!」
「本当にそうかな? 雪はカンがいいぞ」
「うぐっ」
『近衛騎士団』たちは椅子に座り込む。
「まぁ、いいや。そういえば、これは異端審問だったな。俺は異端認定されたままなのか?」
春真の問いかけに『近衛騎士団』たちは考え込む。
「そういえば、そうだったな。君は我々の仲間に近い存在だ。異端認定は取り消すとしよう」
「そうか、ありがとう。では、君たちに一つ情報をやろう」
春真は
「笹原志紀という者が、雪に志紀にぃと呼ばせようとしていたぞ」
「は、春真! 何を言っている!」
「
「む、昔の話だぞ! 彼が言ったのは何年も前の話だ!」
「ふむ。言ったことは事実なのか。今度我らで彼を優しく尋問しよう」
『近衛騎士団』の三人は舌なめずりをしながら
「ひぃ! き、君たちは『
「姫様は愛でるものだ。断じて恋愛対象ではない!」
「なぁっ!」
「我らの恋愛対象は・・・」
『近衛騎士団』は
「い、以上で『近衛騎士団』の審問を終わる! 俺に近づくなぁ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます