第47話 異端審問 その1
6月第2土曜日。先週、県高校総体も終わり、学校中が少し燃え尽き症候群になっている頃、春真の高校では午前中だけ授業が行われた。昼前には授業が終わり、放課後に突入する。
放課後になり、春真は視界が真っ暗で手足を縛られ、体も椅子と一緒に縛られていた。周りには何人もの気配を感じる。一人、春真に近づいてきて目隠しを外す。春真は眩しさに目を細めながら、周りを確認する。
春真の前と左右には机が並べられており、それぞれ三人ずつ座っている。春真の傍には目隠しを外した人物が一人。後ろにも何人か人がいる。制服を見る限り全て男子のようだ。他に共通しているのは、全員黒い目出し帽をかぶっていることだ。銀行強盗のように、目と口しかわからない。
「よく来てくれた藤村春馬」
春真の近くに立っている人物が春真の周りを歩き回りながら声をかけてきた。
「俺は突然後ろから目隠しをされ、ここに拉致されたんだが? どういうことだ志紀?」
「志紀だと? あの女の子にもてるかっこいい笹原志紀君のことかね? 残念ながら私は超イケメンの彼とは違う。私のことは
「志紀から指揮者、そして管弦楽団のオーケストラか? もう少し名前を捻ろよ」
「うっ! わ、私は
少し動揺した
「さて、藤村春馬。君に来てもらったのは他でもない。君を異端審問にかけさせてもらう!」
「はぁ? 異端審問?」
「そうだ。君は三つの組織から異端認定された。したがって、今日は合同で異端審問を開く。私、
「では、君を異端認定した三つの組織を紹介しよう。まず、前方に座っている組織だ。」
「我々は『マドンナファンクラブ』。ファンクラブ会員001番だ」
「ファンクラブ会員002番」
「ファンクラブ会員003番です」
「会員を代表して我ら三人がここへ来た。『マドンナファンクラブ』は東山伶愛様、我々はアズマ様と呼んでいる御方を日夜応援する組織である。彼女は我らの神であらせられる。藤村春馬。貴様は我らの掟を破り、神の御体に触れ、アズマ様を体育祭でお姫様抱っこをした。他にもアズマ様が貴様の家に遊びに行ったこともあるらしいじゃないか。それに、お兄さんと呼ばれるなんて超羨ましい! よって、我ら『マドンナファンクラブ』は貴様を異端認定した。以上だ」
マドンナファンクラブの三人が着席した。
「だたの嫉妬でいいのか?」
春真の言葉は誰にも拾われることなく無視された。
「次は君から見て右手にいる組織だ」
「我々は『
「次兄です」
「三兄だ」
「貴様は我らの妹に『お兄ちゃん』と呼ばせているらしいな。『お兄ちゃんありがとう』、『お兄ちゃん大好き』と言わせているのだろう! そして、夜に妹が『眠れないから一緒に寝てもいい?』とおねだりしてきて、同じベッドで寝て、二人はそのまま禁断の兄妹愛を育む・・・何て羨ましい! 我らの妹夏稀を貴様のような変態に任せるわけにはいかない! 妹は我々真なる兄たちが救い出す! 以上だ」
「夏稀は俺の実妹だから。それに、禁断の愛なんか育んでないから」
春真の言葉は再び無視される。
「最後は左手にいる組織の紹介だ」
「我らは『近衛騎士団』!
「グランピー」
「・・・バッシュフル」
「我らの目的は姫様をお守りすること。貴様は騎士団の規律を破った。貴様は姫様を愛人と言いふらしているらしいじゃないか! それに姫様と幼馴染だと! 幼馴染だからと自分の家に呼び、欲望を解き放ち、あの小さくて可愛らしい姫様の体を肉欲のままに愛で、貪っているんだろ! あの小さな手や口や胸でご奉仕させている鬼畜め! 我らは絶対に貴様を許さん! 姫様を救い出す! 以上だ!」
近衛騎士団の三人が着席する。
「愛人って言ったのは雪のほうなんだが。 それに七人の小人ってなんだよ。ドックは明らかに柔道部だろ、その体格。グランピーはバレー部だろ、その背の高さ! バッシュフルはラグビー部だな。筋骨隆々だし。全然小人じゃねぇ!」
「藤村春真。先ほどからなんだね? 無用な私語は慎みたまえ!」
「さて同志たちよ。自己紹介をありがとう。これから、異端認定した藤村春真の異端審問を始める。次はいつ開かれるかわからない。思う存分藤村春真を拷問し、罵詈雑言を浴びせ、ハーレム主人公を糾弾しようじゃないか!」
うおおおおおおおお、と出席者たちからの雄たけびが上がる。
「それでは異端審問を始める!」
怒りと恨みと嫉妬と憎しみと血の涙が混ざった男たちの審問が始まる。
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