第46話 追及
クエスト完了の報告と、
「さあ! 詳しく教えてちょうだい!」
ペーパーが目を輝かせて二人に迫る。二人が家に帰ると、家の前にペーパーが待ち構えていたのだ。
「何のことですか?」
スプリングはとぼける。しかし、ペーパーには通用しない。
「とぼけても無駄よ、まおーくん。左手の薬指にはめられた指輪にはとっくに気づいているわ!」
できるだけ隠していたがバレていたらしい。
「それにアストレイアちゃんでバレバレよ!」
「私、ですか?」
「そうよ! 何その蕩けた顔は! 指輪も触っているし、眺めてニヤニヤしているし」
ペーパーの指摘にアストレイアは手で顔を触るがにやけ顔が止まらない。
「はぁ。わかりましたよ」
スプリングは諦める。
「それでいいのよ、まおーくん」
「あっ! この動画を見たらわかりやすいと思います」
アストレイアは画面を操作してクエストの動画を見せようとする。
「ちょっとそれは待て!」
スプリングは制止するがその前に動画が始まる。アストレイアに止めさせようとするがペーパーが邪魔をして、どこからともなく取り出した縄でスプリングをグルグル巻きにする。口にも猿ぐつわをされる。
「邪魔はいなくなったわ。ゆっくりと見ましょうか」
「そうですね」
「ん~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
「先輩静かにしてください!」
「・・・」
アストレイアとペーパーはゆっくりと上映会を楽しんだ。
スプリングのダメっぷりにペーパーがおなかを抱えて笑い、アストレイアが彼の可愛さに悶えて、スプリングは暴れだす。途中で何度かイチャイチャしているところをペーパーにからかわれ、アストレイアが顔を真っ赤にする。開かずの扉を開けたことを驚き、
「まさかヘタレのまおーくんがキスするとは!」
「そうなんですよ! 私も驚いて驚いて!」
二人がスプリングを見るが、口に猿ぐつわをされていて、喋ることができない。アストレイアは仕方なくスプリングの猿ぐつわを外す。
「さぁ、まおーくん話しなさい!」
「・・・何をですか?」
「なんでアストレイアちゃんにキスしたの?」
スプリングは顔をそむけて何も答えない。
「まおーくん?」
「言いたくありません」
「私がお願いしてもだめですか?」
「うぐっ! い、いやだ」
「アストレイアちゃん。まおーくんの弱み握ってない?」
「いくつかありますよ。あれは私が家に遊びに行ったときに・・・」
「言います! 言いますから! やめてください!」
スプリングはあっさりと白旗をあげる。
「・・・か・・・です」
「はっきり言いなさい!」
「キスしたかったんです! 我慢できませんでした!」
スプリングは叫ぶようにして言った。顔が真っ赤になる。アストレイアも顔が赤くなる。
「やっぱり男の子ねぇ。今までヘタレすぎて男好きか疑ってたところもあったけど」
「俺は女性が好きですよ!」
「女性の中でも誰が好きなの?」
ペーパーがにやにやして聞いてくる。
「うぅ・・・。そうですよ・・・。レイアが好きですよ」
「ひゃ!」
アストレイアが体をビクッと震わせる。
「カミさん。要件は以上ですか? 早くレイアとイチャイチャしたいんですが?」
スプリングはペーパーを早く追い出したい。こう言えばペーパーは早く帰ってくれるはずである。
「ふふふ・・・。少しは素直になったわね、まおーくん」
「ひゃぅ・・・私・・・死んじゃうかも・・・」
アストレイアが思わずイチャイチャの内容を想像してしまう。ペーパーはアストレイアを見て、優しく微笑む。
「じゃあ、早く済ませるわね。まず一つ目。あなたたちはこれから付き合うのかしら?」
ペーパーの問いかけにアストレイアとスプリングは顔を赤くしたまま見つめ合い、首をかしげる。
「付き合うのか?」
「どうなんでしょう?」
「このままでよくないか?」
「ですよね?」
ペーパーは頭を抱える。
「あなたたちってば・・・。まぁ、いいわ。後でゆっくりと話し合いなさい。じゃあ二つ目の質問。結婚したことで変わったことはあるかしら?」
「ステータスが上がりました」
「それも1.5倍になりました」
「何ですって!」
「パーティを外れると1.4倍になったんですけど」
「ステータスの上昇には他にも条件があるみたいね」
ペーパーが考え込む。
「後でじっくりと検証するわ。その時は、あなたたちにも手伝ってもらうかもしれないから。じゃあ、今日は次で最後にしましょう。新しく手に入れた称号を教えてちょうだい。教えたくないなら言わなくていいけど」
「わかりました。まず『龍神の祝福』が『龍神の加護』に変わりました。効果は、竜と龍の好感度上昇(大)、水中・空中行動補正(極大)です」
「後は『アストレイアの夫』という称号ですね。効果は何もありません。ですが、運営からメッセージがありました」
「何かしら?」
「『結婚システムをようやく導入することができました! 運営一同いつもお二人を楽しみに眺めております。この度はご結婚おめでとうございます』だそうです」
「私のほうもです。ただ『スプリングの妻』という称号ですが」
「結婚した者に送られる称号みたいね」
ペーパーが推測を述べる。そんなペーパーにアストレイアがおずおずと述べる。
「・・・あと一つあります」
「教えてちょうだい」
「称号『禁断の愛』です」
「ほうほう!」
ペーパーのにやけた顔がより一層にやける。
「『普段は殺し合う運命の勇者と魔王の禁断の愛』だそうです。効果は書かれていません」
「何か効果があるかもしれないけれど伏せられているのね。これはまおーくんにもあるの?」
「ありますね」
「効果がわかったら教えてちょうだい」
「「はい!」」
ペーパーはソファから立ち上がる。そして、スプリングの縄を解いて彼を解放する。
「あれ? カミさんもう帰っちゃうんですか?」
アストレイアが不思議そうな顔をする。
「ええ。初夜を邪魔したら悪いでしょう?」
アストレイアの顔がポフンと爆発して赤くなる。ペーパーはにやりと笑って、手を振りながら部屋を出て行く。
「では、お二人さんお幸せに~」
ペーパーがいなくなったリビングに沈黙が舞い降りる。とても恥ずかしくて気まずい。
スプリングがアストレイアの隣に座った。アストレイアがビクンと反応する。スプリングがアストレイアに腕を回す。スプリングが何かするたびに、アストレイアはビクビク震えている。スプリングはアストレイアを巻き込んでソファに倒れ込む。彼がアストレイアの下になった。
「レイア」
「っ!? は、はい!」
「約束を実行してもらいます」
「や、約束!? キ、キスの約束ですか!? 無理です! まだ無理です!」
「キスでもいいけど、俺が言いたいのは抱き枕の約束です。それに、今月いっぱいレイアを好きにできるんだろ? だから今からレイアは抱き枕です」
「わ、わかりました。好きに抱きついて触って撫でて揉んで嗅いで顔をうずめてください」
「そ、それだと俺が変態みたいなんだけど!?」
「先輩は変態さんですよ?」
「そ、そうでした。では遠慮なく」
スプリングはアストレイアを優しく抱きしめ、彼女の頭を撫でる。最初は緊張していたアストレイアも次第に普段のように安心して顔が緩み始める。顔が緩んで幸せそうなアストレイアを見つめて、スプリングが優しい声で囁いた。
「レア、大好きだよ」
「私も大好きです」
アストレイアが可愛らしく微笑んだ。
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