第43話 廃れた聖堂 その11

 

 ライダーキックで礼拝堂チャペルの扉を蹴破った新婦ブライドマミーは、スタッと綺麗に着地を決める。


「旦那様! あたしが来たっすよ!」


「あぁ・・・。僕の愛しのマミーちゃん」


 新婦ブライドマミーと新郎グルームリッチは歩み寄り、抱きしめ合う。


「旦那様、ごめんなさいっす。あたし結婚式の前に寝ちゃって、今まで寝てたっす」


「今僕も聞いたよ。結婚式に君が現れなかったからフラれたかと思ってた」


「うぅ・・・本っ当にごめんなさいっす。ずっとあたしのことを待っててくれてありがとうっす!」


「いつか君が来てくれるとずっと信じてたよ。今から僕たちの結婚式を始めよう」


「はいっす!」


 新郎グルームリッチは新婦ブライドマミーから離れ、彼女の手を引いて聖壇の前に移動する。アストレイアとスプリングも新郎グルームリッチと新婦ブライドマミーに促され二人の後ろをついていく。聖壇の前で新郎グルームリッチと新婦ブライドマミーは向かい合う。


「オホン。失礼ながら私が牧師さんの代わりを務めますね」


 アストレイアが咳払いをして、自ら役目を願い出る。


「お願いします」


「お願いするっす」


 新郎グルームリッチと新婦ブライドマミーはアストレイアに頭を下げる。アストレイアは頷き、二人に向かって言葉をかける。


新郎グルームリッチ、あなたはここにいる新婦ブライドマミーを、病めるときも、健やかなるときも、富めるときも、貧しきときも、妻として愛し、敬い、慈しむと誓いますか?」


「はい、誓います」


 新郎グルームリッチは新婦ブライドマミーを見つめ優しく誓った。


新婦ブライドマミー、あなたはここにいる新郎グルームリッチを、病めるときも、健やかなるときも、富めるときも、貧しきときも、妻として愛し、敬い、慈しむと誓いますか?」


「はい、誓うっす」


 新婦ブライドマミーは新郎グルームリッチを見つめて元気よく誓った。


「それでは、指輪の交換です。指輪はありますか?」


「はい、ここに」


 新郎グルームリッチがポケットから指輪の入った箱を取り出す。アストレイアに促され、スプリングが箱を受け取る。そして、ふたを開け結婚指輪を渡す。


「マミーちゃん。ずっと愛してるから」


 新郎グルームリッチはそう言うと新婦ブライドマミーの左手の薬指に指輪をはめる。新婦ブライドマミーはうっとりと指輪を眺める。


「旦那様。もう離れないっす。ずっと一緒っす」


 新婦ブライドマミーは新郎グルームリッチの左手の薬指に指輪をはめる。


「次は誓いのキスです」


 アストレイアが頬を赤く染め、進行を続ける。新郎グルームリッチが優しく新婦ブライドマミーのベールを上げる。新婦ブライドマミーと新郎グルームリッチは見つめ合い、ゆっくりと顔を近づけていく。そして、唇が重ね合わさった。


「おぉ!」


 思わずアストレイアの口から声がこぼれる。新婦ブライドマミーと新郎グルームリッチは数秒間キスをするとゆっくりと唇を離した。二人は見つめ合っている。

 アストレイアは気を取り直して最後の言葉を述べる。


新婦ブライドマミーさんと新郎グルームリッチさんは、私アストレイアとスプリングの前で神聖なる夫婦の誓約を行いました。故にこの二人が夫婦であることを宣言いたします。お二人ともご結婚おめでとうございます」


 アストレイアとスプリングが盛大に拍手をする。新婦ブライドマミーと新郎グルームリッチは嬉しそう抱きしめ合う。そして、再びキスをする。


「よかったです。本当によかっだでず」


 アストレイアが途中から目をウルウルさせて涙声になる。


「二人ともありがとうございました」


「ありがとうっす」


 新婦ブライドマミーと新郎グルームリッチはアストレイアとスプリングに向き直り、お礼を言う。そんな二人に天井から光が降り注いでくる。


「その光は・・・」


「どうやらお迎えのようですね。最後の願いが叶いましたから」


「成仏っすよ」


 新婦ブライドマミーと新郎グルームリッチは柔らかな光に包まれ、光をあげて少しずつ消えていく。


「本当にありがとう。君たちがいなかったら僕たちは結婚することができなかった」


「そうっすよ。ありがとうっす」


「いえいえ。もう離れたらダメですよ。あちらの世界でもお幸せに!」


「お幸せに」


 アストレイアとスプリングの言葉に新婦ブライドマミーと新郎グルームリッチは頷き、抱きしめ合う。


「もう絶対に離さないから」


「あたしもっすよ旦那様」


 そう言うと、二人は光に包まれて消えていった。

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