第41話 廃れた聖堂 その9
二人は地下三階の大きな扉の前に立っていた。荘厳な二枚の扉には複雑で緻密なレリーフが彫ってある。この先には
「覚悟はいいですか先輩?」
「あぁ。本気出して早く終わらせる」
二人は扉に触れる。すると、二人の前に画面が現れた。
『ここから先はボスエリアです。ボスに挑戦しますか? YES or NO 』
二人はYESを同時に押す。すると、扉がゆっくりと開き、二人は
アストレイアとスプリングの二人が部屋に入ると、二人の背後で扉が閉まる。そして、後ろを向いていた男性が振り返った。顔や手は骨であり、両目には赤い炎が漂っている。体の輪郭が時折揺らいで霞んでいる。ボスモンスター
「やはり、
「
「やってみましょう。
「グガ・・・・ガァアアアアアアア!」
「だめですね。話が通用しないみたいです。・・・それにしてもどこから声を出しているんでしょう?」
アンデッドモンスターが目の前に沢山出現したにもかかわらず、アストレイアは呑気に首をかしげている。
「・・・ど、どうでもいいだろそんなこと! ゲームだから! ファンタジーだから!」
スプリングは顔を青くし、声を裏返してアストレイアにつっこむ。
「く、来るぞ! 聖属性付与!」
スプリングは剣を構えると、自らの剣に付与魔法で聖属性を付与する。片手剣が白く輝く。
「『奥義 花鳥風月”花吹雪”』」
スプリングの持つ片手剣の刃の周囲に花びらが渦巻く。
「飛剣!」
聖属性を帯びた斬撃がアンデッドモンスターに向けて飛んでいく。その斬撃に花びらが纏い、聖属性の斬撃と花びらのダメージがモンスターたちを襲う。
スプリングは次々に斬撃を飛ばし、斬り裂いていく。斬られたモンスターたちが光をあげながら次々と消滅してく。
「うわぁ・・・。何という奥義の無駄遣い。飛剣で飛ばしたら花びらの威力は半減でしたよね?」
「いいんだよ! 俺は近づきたくないの!」
呆れているアストレイアにスプリングは大声で言い返す。残っているモンスターはもう10体もいない。
「『奥義 花鳥風月”鎌風”』」
スプリングは残っているモンスターに向けて剣をふるう。剣から真空の斬撃が飛び、モンスターを斬り裂く。モンスターは光を上げながら消滅していった。
「うわぁ・・・。近接戦闘の先輩が全て遠距離攻撃で仕留めちゃいましたよ」
「だからいいの!」
「さっきよりも強そうですね」
「そうだな」
「俺は飛んでくる魔法を担当するから、レイアはあいつらを頼んだ」
「えぇー! 先輩が倒したくないからでしょ! でも、いいでしょう。任されました」
アストレイアは杖を構える。そして、呪文の詠唱を省略し、魔法を発動させる。
「『
フィールドを聖域と化し、裁きの光がアンデッドモンスターに降りかかる。モンスターたちは浄化され、光で焼き尽くされて瞬く間に全滅する。全滅するのに5秒もたっていない。
「終わりました!」
「はやっ!」
「どやぁ」
驚くスプリングに向けてアストレイアがドヤ顔する。
「ついでに
「次は先輩の番ですよ。私よりも早く倒せますか? 私は約5秒といったところです。私よりも早く倒せたら
「よしのった!」
「だめだったら先輩が私にしてくださいね」
「いいだろう!」
スプリングはやる気に満ちて、アンデッドモンスターたちに剣をむける。そして、自らの剣に命じる。
「幻想剣『夢幻』解放」
片手剣が様々な虹色に輝き、威圧されるような覇気が溢れ出す。スプリングの体も輝き、ステータスが大幅に上昇する。
「あぁ! 先輩それは卑怯です! ずるいです! チートです!」
「方法については何も言っていないからな。『胡蝶之夢』」
スプリングは軽く剣を振ると鞘に戻す。目の前にいるモンスターの体に左肩から右わき腹にかけ、斬られたような跡ができ、そこから青や赤や黄や緑といった様々な色の蝶が溢れ出し、モンスターを包んで消滅した。
「俺は3秒くらいかな? 俺の勝ち!」
スプリングは振り返ってアストレイアにドヤ顔をするが、彼女は不敵に微笑んでいた。
「ふふふ・・・。そうでしょうか?」
「どういうことだ?」
「先輩は夢幻を解放したときからがスタートです。解放して倒し終わるまで約7秒でしたよ」
「途中レイアがしゃべりかけてきただろ!」
「ふふふ・・・。それも計算の内です」
「卑怯だぞ! ずるいだろ!」
「何とでもおっしゃってくださいな。私は勝つためには手段なんか選びません! 私が7秒と言ったら7秒なんです。先輩の負けなのです!」
「くっ! いいだろう。俺の負けだ」
スプリングは悔しそうに負けを認める。アストレイアは得意げだ。
「では、
スプリングは悔しそうな表情を一転させて、にやりと笑う。
「わかった。してほしいときに、”キスしてください”って言ってくれ。そしたらするから」
「はぁっ! そんなこと言えるわけないじゃないですか!」
「言わなきゃわからないだろ?」
「私はいつでもいいですから!」
「そうだなぁ。言ってくれたら優しく抱きしめて、耳元で甘い愛の言葉でも囁こうかな」
「さ、流石魔王です。なんという恐ろしいことを! うぅ・・・どうしよう。ものすごくそそられます。でもでも、自分からキスをおねだりするのは恥ずかしいし・・・。でも、先輩にされたいし・・・」
うぅ~、とアストレイアはスプリングに優しく愛されたいという思いと、自分からおねだりする恥ずかしさの二つの感情がせめぎ合っている。
「先輩。沢山キスしてくれますか?」
「別に回数制限してないから、レイアが望めばいくらでも」
「唇にも?」
「レイアがいいならするけど・・・」
「キスのおねだりはいくらでも待っててくれますか?」
「わかった。いくらでも待つから」
「よし! それなら少しの間待っててください! 私に勇気が出るまで!」
「了解」
二人は
「ガガガガァァァァアアアアアアアアアア!」
二人が形成した二人だけの甘ーいイチャラブ空間を
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