第31話 説明
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スプリングは寝室のベッドで目が覚める。起き上がってリビングへ向かう。リビングには紅い髪の少女がソファに座っていた。アストレイアがスプリングに気づき立ち上がる。そして、スプリングの胸に飛び込んでいく。
「先輩!」
「レア、ただいま」
「先輩、おかえりなさい! ・・・おそいです」
アストレイアは拗ねている。
「ごめん。次は出迎えるよ」
スプリングはアストレイアをギュッと抱きしめる。そのまま、二人はソファに倒れ込む。
「体育祭の時の命令権を使おうかな」
「はい、何でしょうか」
「今日はレアを離さないから。何があっても」
「それくらいなら、命令じゃなくてもいいです。私もそのつもりでしたから」
二人は抱き合ったままイチャイチャしていると、二人にアナウンスが聞こえた。
『プレイヤー:タクトが訪問してきました。入室を許可しますか?』
スプリングは黙ってNOの画面を押す。
『プレイヤー:タクトが訪問してきました。入室を許可しますか?』 『NO』
『プレイヤー:タクトが訪問してきました。入室を許可しますか?』 『NO』
『プレイヤー:タクトが訪問してきました。入室を許可しますか?』 『NO』
『プレイヤー:タクトが訪問してきました。入室を許可しますか?』 『NO』
『プレイヤー:タクトが訪問してきました。入室を許可しますか?』 『NO』
『プレイヤー:タクトが訪問してきました。入室を許可しますか?』 『NO』
「先輩・・・諦めましょう」
アストレイアが起き上がりながら言った。スプリングは不機嫌そうだ。二人はソファに座り直す。スプリングはアストレイアを自らの膝の上に乗せる。
「先輩? 流石にこの状態で会うのは恥ずかしいんですけど」
「今日は何があっても離さないって言った。それにタクトはお前のリアルに気づいたぞ」
スプリングは渋々訪問の許可を与えた。
「はるまぁああああああああ!」
叫びながらドアを勢いよく入ってきたタクト。タクトは膝の上にアストレイアを乗せてイチャイチャしているスプリングを見つける。彼はスプリングに飛び掛かっていく。
「このくそやろぉおおおおおおお!」
「ちょっと待て! それ以上近づくな! レイアが嫌がる」
「えっと、タクトさん? 落ち着いてください」
タクトは立ち止まったものの怒りは収まらない。
「勇者ちゃん、ソイツから離れろ! そいつは人妻と不倫するような最低野郎だぞ! 春真! それは人妻に教えてもらったことなのか! お前がしたのか!? それともされたのか!?」
アストレイアを膝の上に乗せているスプリングを指さしながらタクトは叫ぶ。
「先輩? 人妻とは?」
「愛華さんだ」
「あぁー。タクトさんとりあえず座ってください」
事情を理解したアストレイアがタクトに座るよう勧める。タクトは渋々従った。ソファに座ってスプリングを睨みつける。
「タクト」
「二股野郎の話など聞かん!」
「じゃあ何のために来たんだよ・・・」
「勇者ちゃん、そいつは今日、綺麗な人妻が車で迎えに来て、一緒に家に行ったんだ。そんな奴とは別れたほうがいい」
「それは真っ赤なオープンカーでしたか?」
「・・・ああ。そうだが」
タクトは眉をひそめながら答えた。
「あの・・・それ私の母です」
「はい?」
「タクトさんは私のリアルに気づいたんですよね? あれは私の母なんです。今日先輩を迎えに行ったそうで・・・」
「春真! お前彼女の母親と不倫してんのかっ!?」
「ちげーよっ! どうしてそんなことになるっ! あと
タクトの的外れな考えにスプリングは声を荒げた。
「今日先輩が私の家に遊びに来たんですよ。私をびっくりさせるために迎えに行ったそうです。それに先輩とウチの両親は仲がいいので」
タクトはようやく理解し始める。
「えっ? 本当に不倫してないのか? ママ活って言ってたぞ」
「時々レイアの両親と買い物に行ってるだけだ」
「子供が欲しいって」
「レイアとの子供だ! 早く孫を見せてって毎回言われてる」
「体の相性がいいって」
「男嫌いのレイアと相性がいいって言う意味だ。愛華さんは
「いろいろ教えてるって」
「レイアのことを教えてもらってるんだ。小さい頃の話とか、恥ずかしい話とか。今日も・・・あっ」
「せんぱい?」
膝の上に座っているアストレイアから冷たい声が響いてきた。スプリングは背筋を凍らせる。
「お母さんは先輩に一体何を言ったんですか? 教えてください」
「ナ、ナンニモキイテナイデスヨー」
思わず片言になるスプリング。振り返ってくるアストレイアの空色の瞳が黒く濁っている。
「教えてください」
「何も聞いてません」
「教えなさい」
「嫌です」
「教えろ」
「東京ツリーの展望台で腰を抜かした話なんて聞いてません! ・・・あっ」
アストレイアの口から暗い笑い声が響いてくる。
「ちょっと待て! お前も夏稀と雪から俺の話聞いてるだろ! お互い様だ!」
「うふふ、そうですよね。先輩が夜にホラー映画を見て、怖くて寝ら・・・きゃっ!」
昔の恥ずかしい話を暴露されそうになったスプリングは、アストレイアの横腹をくすぐる。彼女はくすぐりに弱い。
「ちょっと! あははいひひ・・・やめてください! きゃあ・・・そこは・・・ふひひひひ・・・ダメですから・・・らめぇ・・・らめぇれすぅ~」
呼吸ができなくなるまでスプリングはくすぐった。涙目で呼吸を荒げたまま、キッとスプリングを睨みつけると、アストレイアは反撃する。
「ふぅ~」
「ひょわぅ! 耳に、ひゃう! 息を、あう! かけるな!」
二人はソファに倒れ込む。アストレイアはスプリングの耳に、カプっと噛みつく。
「ハムハムハム」
「あ、甘噛みするな~!」
「レロレロレロ」
「舐めるな~」
スプリングも弱点の耳を甘噛みや舐められながら、何とか反撃する。
「っん~~~~~~!」
「お前の、弱点は、全て、知ってる」
スプリングは彼女の弱点をくすぐる。アストレイアの体がビクビク跳ねる。でも、甘噛みするのを止めない。
「
「お前が・・・先に止めろ・・・あぁ~~~~~~~~~」
二人はソファでお互いの弱点を攻め合い、体が絡まり暴れている。もう、お互い相手のことしか考えておらず、相手を先にダウンさせるために際どいところを攻め合っていた。
「うん。こいつが浮気する訳がないよな。おーい! 俺がいるんだけどー! うん、聞こえてないな。俺帰っていい? 帰っていいよな? 帰るぞ! 帰るからな! お幸せに爆発しろ!」
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