第29話 伶愛の部屋

 

 春真は伶愛の家にお呼ばれしていた。春真と伶愛はの二人は、伶愛の母である愛華に根掘り葉掘り聞かれ、からかわれていた。いつもは愛華の夫がストッパーとなり彼女を抑えてくれるが、今日彼は出張に行っておりここにはいない。そのため、愛華の暴走は止まらない。なぜか、ゲームの中でイチャイチャしている内容までバレていた。


「春くんも伶愛ちゃんもチューしてるとはね。現実ではしてないの?」


 うふふ、と笑みを浮かべながら真っ赤になっている春真と伶愛に追及する。


「現実ではしてないみたいね。まだゲームの中だけなのね。唇・・・はまだ。ほっぺ・・・してるわね。首筋・・・これもなし。それじゃあ、おでこ・・・したみたいね」


 全て愛華にバレている。と言っても、伶愛の体がビクッと反応しているため、まるわかりである。愛華は伶愛の反応を見て全てを把握している。


「キスの写真とかないの? ・・・あるみたいね。お母さんに見せなさい!」


 盛大にビクつくいている伶愛を見て、愛華が目を輝かせる。伶愛が目に涙を浮かべながら体をプルプルと震わせる。そして、勢いよく席から立ち上がると愛華に向かって叫ぶ。


「お母さんのばかぁぁぁああああああああ!」


「うおっ!」


 伶愛は春真の手を掴むと春真を引きずりながらリビングを飛び出して行った。リビングを飛び出す二人に向かって愛華は言う。


「避妊しなくていいからね~! ごゆっくり~!」


 ▼▼▼


 伶愛は春真の手を掴んだまま、自分の部屋に入るとドアを勢いよく閉めた。そして、春真の胸に飛び込む。ぎゅっと抱きつき、彼の胸に顔を押し付ける。


「お母さんのばかぁ・・・」


 泣きそうな顔をスリスリとこすりつける。そんな彼女を見て春真は優しく頭を撫でた。しばらくすると伶愛は落ち着いたのか、春真から体を離す。伶愛はなぜかムスッとした顔だ。


「先輩、ベッドを背もたれにして座ってください」


 春真は大人しく伶愛の言うことを聞く。


「足は少し広げてください」


 春真は足を少し広げる。それを見た伶愛は後ろを向き、空いたスペースに座り込んできた。春真を背もたれにしている。伶愛は春真の手を取ると、自らのおなかに手を回させる。安心して春真にもたれかかると、ふぅ~、と可愛らしく息を吐いた。


「伶愛さん? 何をしていらっしゃるのですか?」


「見ての通り先輩を背もたれにして座っています」


「なぜでしょうか?」


「私が落ち着いて安心するからです」


 疲れて声に力が入っていない。愛華にからかわれたのが相当疲れたらしい。

 逆に春真は全く落ち着かない。現実でこんなに密着するのは初めてだ。ゲームの中よりも温かく、柔らかく、いい香りがして落ち着かない。必死で別のことを考える。素数を数えていたら、満足げな伶愛が話しかけてきた。


「そういえば先輩、私の部屋に入ったの初めてですね」


「そういえばそうだな」


 春真は伶愛の家に何度も来たことがあるが、彼女の部屋に入ったことはなかった。これが初めてである。


「どうですか私の部屋は。ご感想をどうぞ」


 春真は部屋を見渡す。整理整頓された机。いくつかの可愛らしいぬいぐるみが座っているベッド。漫画やラノベが並べられている本棚。部屋全体が綺麗に可愛らしくまとめられている。


「なんか・・・伶愛みたいに綺麗で可愛らしい部屋だな」


 伶愛がバシバシと叩いてくる。


「どうして、平然と、そんなこと、言うんですか」


「正直な感想を述べただけだぞ。うぐっ!」


 肘を撃ち込まれた春真は悶絶する。伶愛は、ふんっ、とそっぽを向いている。

 しばらくして、痛みが落ち着いた春真は少し欲を解放する。


「肘を撃ち込んだ罰だ」


 伶愛のおなかに回されていた手を彼女のスラっとした白い太ももに向ける。そして、ひと撫でした。


「ひゃうっ」


 伶愛は体をこわばらせる。しかし、何も抵抗しない。春真はもっと触りたい衝動を抑え、手を彼女のおなかに回し、抱きしめる。伶愛は耳まで赤い。


「先輩は変態さんです」


「ああ。変態だな」


「もっと触っても良いですよ?」


「・・・じゃあ触る」


 春真はTシャツの上から伶愛のおなかを触る。ほっそりしてるがとても柔らかい。しばらくずっと触っていく。伶愛はくすぐったいのだろう。必死で我慢している。そこがまた可愛らしい。


「ふぅ。満足した」


 五分ほどずっと伶愛のおなかを触っていた。その間、伶愛は全く抵抗せず、春真のされるがままだった。これ以上は、春真の理性がもたない。


「へんたい・・・」


 恥ずかしそうに小さな声で伶愛が呟く。


「あぁー。嫌だったか?」


 伶愛小さくフルフルと首を横に振る。春真はそんな彼女が愛おしくてたまらない。


「伶愛・・・可愛いよ」


 伶愛の体がビクッと震え、彼女は手で顔を覆う。一分ほどして伶愛が復活した。


「よし! 落ち着きました!」


 普段の彼女に戻っている。


「今のは100点満点中80点でしょうか。先輩が徐々に点数を上げていますね。目指せ100点!」


「それ、湖の中でも言っていたな。100点になったらいいことあるのか?」


「私が喜びます!」


「それなら・・・頑張るか」


「あれ? 先輩がやる気です。珍しい」


「ゆっくりと満点目指すさ。で、さっきのは残り20点どうすればよかったんだ?」


「それは秘密です! 教えませーん」


 伶愛が春真のほうを見て可愛らしく舌を出して、あっかんべーをしてくる。春真は伶愛の太ももを軽くひと撫でする。ひゃう、と可愛い悲鳴を上げて伶愛は立ち上がった。


「もう! 先輩は変態なんですから!」


「ごめんなさい」


「別に嫌ではないですから。でも、私も好きなことしていいですよね。先輩立ってください!」


 伶愛に手を引かれて春真は立ち上がる。そして、後ろに突き飛ばされた。春真はベッドに倒れ込む。


「はい、そのままちゃんと寝てください。動かないでください! ああもう! シャツのボタン邪魔! ベルトも邪魔!」


 春真は訳が分からず伶愛の言うことを聞く。伶愛の調きょ・・・教育の成果だ。瞬く間に制服のシャツを脱がされ、ベルトも外される。そして、伶愛が春真の上にうつ伏せで寝てきた。


「ちょっ! 伶愛!」


「何ですか? ゲームの中ではいつもやってることです。今さら恥ずかしいことですか?」


「・・・顔真っ赤だぞ」


「うるさいです!」


 伶愛は春真の胸に顔をこすりつける。


「伶愛さん? いろいろ当たってるんですが?」


「当てているのです! おお! 言ってみたいセリフを言うことができました」


 伶愛は満足そうだ。


「先輩はこのまま私のベッドになってもらいます」


 伶愛は小さく欠伸をして、目がだんだん閉じていく。


「お母さんにからかわれて疲れました・・・。私、寝ます・・・。今日はまだ変なことしちゃダメですよ。まあ、触るくらいなら・・・許してあげます。・・・先輩が興奮してるの・・・わかってますし・・・」


 伶愛の声がだんだん途切れ途切れになっていく。


「せん・・・ぱい・・・おやすみ・・・」


 伶愛はすぅすぅと可愛らしい寝息を立ててあっという間に寝てしまった。その寝つきの良さに驚く。春真は彼女を起こさないように頭を撫でる。彼女の温かさや甘い香りに包まれながら頭を撫でていると、次第に睡魔が襲ってくる。


「伶愛おやすみ」


 春真は最後に伶愛を軽く撫でると、自ら睡魔に身を委ねた。

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