第28話 伶愛の家

*すみません。予約投稿を間違えました。第26話を飛ばして投稿してしまいました。第26話女子会その4を読んでいない方はそちらもお読みください(2019.6.30 )* 






 中間テストの最終日。テストが終わった伶愛は、急いで帰宅していた。なぜなら、今日春真が家に遊びに来るからだ。母が彼に連絡して、以前から決めていたらしいけれど、伶愛がそのことを聞いたのは今朝だった。だから、テストもあまり出来が良くない。だが、別にそんなことはどうでもいい。伶愛は急いで家に向かう。

 玄関のドアを勢いよく開け、靴を確認する。まだ、春真は来ていないようだ。急いで母のいるであろうリビングに向かう。


「ただいまお母さん!」


 リビングのテーブルに座ってお茶を飲んでいる母に向かって勢いよく言った。慌てて入ってきた伶愛に向かって、のんびりと母、愛華が言う。


「おかえりなさい。伶愛ちゃんどうしたの? そんなに急いで」


「どうしたのじゃないよ! 今から先輩が来るんだよ! もっと早く言ってくれたら準備してたのに! 部屋片づけなきゃ。それに何着たらいい!?」


 伶愛が愛華に詰め寄る。


「何も着ないとか?」


「私裸族じゃない!」


「下着姿に透け透けのネグリジェ」


「ふむ。それはいいけどお母さんがいないときにする。それに先輩に選んでもらった下着でしたいかな。今度選んでもらう予定だから。ネグリジェも選んでもらおうかな」


「あらそうなの春くん?」


「今度デートに行くことになったので。水着も選ばないといけないそうです」


「それはよかったわね、伶愛ちゃん」


「うん。そんなことより今日何着よう? あっ先輩! 何かリクエストありますか?」


「露出が少ないやつ」


「なるほど。上はTシャツにして、下は・・・ショーパンかな。先輩は意外と足が好きだから」


 着る洋服が決まった伶愛は違和感を覚えて考え込む。そして、三人目の声が聞こえたほうを見ると、ソファに座っている春真が見えた。


「って先輩! なんで! どうして! もういるんですかぁあああああ!」


 春真は申し訳なさそうに頭を掻きながら、愛華のほうを見る。それにつられて伶愛も愛華を見ると、悪戯成功、みたいな笑みを浮かべた愛華がいた。伶愛はそれを見て一瞬で理解した。


「おかあさぁああああああん!」


「あら、いいじゃない。私が春くんと二人で喋りたかったんだし。ほら、早く着替えていらっしゃい。お昼ご飯が食べられないわ」


 そう言うと、愛華は伶愛の背中を押し、リビングから追い出した。



 ▼▼▼



 昼ご飯の間、ずっとムスッとして拗ねていた伶愛は、食後に行われた体育祭の上映会ですっかり機嫌が戻っていた。愛華にダンスをからかわれたり、借り者競争のことを根掘り葉掘り聞かれた。最後に上映された団代表リレーでは、最下位でバトンを受け取った春真が一気に駆け抜け、瞬く間に他の二つの団を抜き去っていく様子に、伶愛と愛華は大興奮し歓声を上げていた。


「いやー、春くんかっこいい!」


 上映会を終え、まだ興奮しながら愛華が春真を褒めた。


「かっこいいですよね」


 伶愛も頬を上気させ、愛華の言葉に頷く。女性二人に褒められた春真はとても恥ずかしそうだ。


「恥ずかしいのでやめてください」


「いいじゃない。本当のことなんだから。伶愛ちゃん! 早く春くんと結婚しなさい」


「まだ年齢的にできないから・・・」


「子供は作れるわ!」


「それはそうだけど・・・」


 伶愛は恥ずかしそうにチラッと春真のほうを見る。


「愛華さん? 俺たち学生ですから、もう少し待っててください」


「春くん言質取ったわよ! よかったわね伶愛ちゃん!」


 伶愛は真っ赤になる。


「もうこの話終わり! はい! 次の話にいって!」


 伶愛はこの話題を強制的に終わらせる。


「わかったわ。じゃあ、今度二人でデートに行くらしいわね?」


 伶愛の体がビクッとする。春真が答える。


「行くことになりましたね」


「下着と水着を選ぶのよね?」


「みたいです・・・」


「あっ! 先輩! 行きたいお店があるので今度教えますね」


「わかった」


 愛華は二人を見て、何かに気づいたように笑う。


「それで? 水着ということは夏休みにどこか行くのかしら?」


 二人の体がビクッとする。そして、春真が恥ずかしそうに白状する。


「あー。嘘ついても意味ないですね。夏休みに伶愛と旅行に行くつもりです」


「あらあら! もしかしてお泊りかしら?」


「はい。それで、愛華さんに許可をもら・・・」


「許可するわ!」


 春真の言葉が言い終わる前に愛華は即答した。


「まだ言い終わってないんですが」


「私に許可を求めたのでしょう? 夫も許可するはずよ。それで、どこにいくつもり!?」


「まだ決めてませんが、海がいいかなと」


「伶愛ちゃんの水着姿が見たいのね! 春くんも男の子ね」


 愛華の言葉に春真は目を背ける。


「じゃあ、ちょっとしたリゾート地にホテル持ってるから、そこはどう? 海もあるわ。あなたたちなら無料でいいわよ」


「ちょっと待って。お母さんホテルとか持ってるの!?」


「うふふ。いろいろと持ってるわよ」


 母親から初めて聞いたことにレイアは驚く。それに意味ありげな顔して愛華は微笑んだ。


「二人ともどうする? いい部屋用意するわ」


 春真と伶愛の二人は、お互いを見て頷く。そして、春真が代表して愛華に言った。


「お願いします」


「わかったわ。それで、何泊する? 何泊でもいいわよ」


「えっと、一泊で」


 春真は控えめに言った。愛華は伶愛に視線を向ける。


「伶愛ちゃんはどう?」


「・・・」


「伶愛?」


 顔を真っ赤にして俯いている伶愛に春真が問いかけた。伶愛は俯いたまま何も反応しない。そんな様子を見て、春真が理解した。


「あーすいません。愛華さん、もう少し泊ってもいいですか?」


 伶愛が目を輝かせる。


「もちろんいいわよ。1週間くらいはどう?」


「4日くらいではダメですか? ウチの妹たちが餓死しそうなので」


 料理が全くできない妹と、最近藤村家に入り浸っている幼馴染を心配しながら春真は言った。


「伶愛ちゃんもいいかしら?」


 伶愛は真っ赤な顔で嬉しそうに頷いた。

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