第26話 女子会 その4

 

 スプリングとアストレイアの家で行われている女子会。アストレイアはシェリーとペーパーの二人に、スプリングとの出会いを語り終わった。そこで、三人は少し休憩を入れる。お茶やお菓子を摘まんで、落ち着いたところで、話を再開させる。


「さて、続きを聞かせてちょうだい」


「特に面白い話は無いですよ。私が先輩にわがまま言って振り回してるだけです。まぁ、主に綺麗な景色を見に行ってますね」


「二人はどこまでしたの!」


「頬にキスまでですかね。唇はまだです。そろそろしてくれそうですけど」


「もっと聞かせてちょうだい!」


「えっと、手をつなぐのはいつものこと。膝枕は私がされてます。先輩の太もも寝心地いいので。ハグは・・・これもよくしてますね。頭もよく撫でられますね。気持ちいいです。あとは・・・私、先輩の体に顔をこすりつけるの好きですね。なんかスリスリしたくなります」


「いいわねいいわね!」


 ペーパーのテンションが限界突破しMAXを超える。


「一番最近のエピソードを聞かせなさい!」


「一番最近ですか。体育祭が終わってお互い疲れたので、ソファでお互い寝そべって抱き枕してました」


「このソファ。このソファなのね! 私たちが座っちゃって大丈夫?」


「大丈夫ですよ! 他には何もしてません!」


「スプリングくんはいつからアストレイアちゃんを好きになったのかな?」


「それは気になるわね。アストレイアちゃんは何か気づいたことある?」


「いやー全然。でも、先輩のことですから、いつの間にか好きになってた、とか言うんじゃないですか? まぁ、実際私、告白されてるんですよね。それとなくですけど」


「「えぇ~~~~~~~~!」」


「私も好きだって曖昧に言いました。でも、まだ付き合わないってお互いに決めて」


「なんで! なんでよアストレイアちゃん!」


「そうだよ。なんでなの!」


 アストレイアにシェリーとペーパーが詰め寄る。


「いやー、AちゃんとBちゃんにちゃんと言ってからがいいかなぁって。友達以上恋人未満って言うのにもあこがれてましたし。当時はそれでいいかなって。まだ中学だったので」


「もったいない! もったいないわアストレイアちゃん!」


「でも、付き合っても付き合わなくても今と変わらないと思うんですよね。普通の恋人以上にイチャイチャしてますし」


「あぁ。イチャイチャしてることを自覚していたのね」


「そりゃもちろん。まぁ、私たちはたぶん付き合いません。お互い好きってわかってますし、時々好意も伝えあっています。将来結婚して一緒になるつもりです。でも、付き合うことはないと思います」


 ペーパーは納得がいかない様子だ。


「カミさん、そんな顔しないでくださいよ。私たちは特殊です。たぶん、一足飛びにプロポーズだと思いますよ。それに、付き合っちゃったら、からかって遊べないじゃないですか。お互い、今の状態がいいんです。もし、付き合ったら・・・肉欲に溺れるかもしれません。・・・それはそれでいいですね」


 どうしよう付き合おうかな、と真剣に悩み始めるアストレイア。


「そうよ! 肉欲に溺れなさい!」


「ペーパーちゃんそれはどうかと思うよ。私が言うのもなんだけど」


 自ら積極的に旦那を襲ったシェリーが言いにくそうにペーパーを注意する。


「でもシェリーちゃん。アストレイアちゃんとまおーくんは夏休みにお泊り旅行に行くのよ! まおーくんは襲う宣言してたし!」


「え? そうなの?」


 シェリーがアストレイアに聞いてくる。


「はい・・・。ちょっとした勝負をしてそうなりました。カミさんが半分決めたようなものですが」


「あら、勝負に負け、旅行に行けなくて残念そうにしてたのはあなたでしょう? まおーくんが誘わなかったら泣いていたでしょう?」


「泣くほどじゃないです! ・・・たぶん」


「でも、ご両親は大丈夫なの?」


 三人の子供を持つシェリーは心配そうに聞いてくる。


「あー。大丈夫ですよ。いろいろあった時に、先輩とウチの両親が知り合いになってますし・・・。両親が先輩のこと気に入ったんですよね。時々家にお呼ばれしてます。デキ婚学生婚オーケーって言ってますし、むしろ応援してきます。孫まだなのって急かしてきますね。お泊まり旅行なんて言ったら、喜んで送り出しますね、ウチの両親」


「すごいご両親ね」


「あはは。よく先輩とメールをやり取りしてるみたいですよ。この間体育祭だったんですけど、母が私の動画を先輩に勝手に送っていました」


「なら、あとは頑張るだけね。応援してるわ。勝負下着を着ないと。今度デートに行くとき、まおーくんに選んでもらう?」


 ニヤニヤしながらペーパーがアストレイアを見てくる。


「それは・・・悩みますね。先輩に選んでもらうか、先輩をびっくりさせるか・・・」


「アストレイアちゃん、いつもスプリングくんに下着選んでもらってるの?」


 シェリーが驚いて聞いてきた。


「ああ、違うのよシェリーちゃん。さっき言った勝負で、二人はデートに行くことになったのよ。それで、まおーくんはアストレイアちゃんの水着と下着を選んで買ってあげるんですって」


「本当はコスプレだったんですけど、いろいろありまして・・・。主にカミさんとか、先輩とか、カミさんとか。お二人はどう思います? 選んでもらうか、びっくりさせるか」


「私はびっくりさせるに一票」


 ペーパーが即答する。だって面白そうじゃない、と目が言っている。


「私もびっくりさせるに一票かな。でも、旅行は一泊だけなの? 何泊かしたらいろいろ見せられるよ」


「シェリーちゃんそれいい! アストレイアちゃん、まおーくんに無理言って何泊かしなさい!」


「ええ! 私、何泊も先輩とお泊りして大丈夫ですかね? 心臓大丈夫かな? ドキドキしすぎで止まったりしませんか?」


「大丈夫よ! いつもここで同棲してるじゃない!」


 シェリーもうんうん、と頷いている。


「ねぇアストレイアちゃん。デートで行く場所決まった?」


「いえ、まだですけど」


「じゃあ、○○県に来れない?」


「大丈夫ですよ。お隣ですし。比較的簡単に行けます」


「そう、よかった」


「どうしたのシェリーちゃん?」


「後で住所をメールで送るけど、ウチのお店に来て。旦那と洋服店してるから。男性ものも女性ものもあるよ。下着も水着もある。水着は来月からだけど。何かあったら私たちがサポートする」


「いいんですか! というかシェリーさんお店してたんですね、スレッドさんと」


「うぅ。私も行きたいけどちょっと遠い」


「大丈夫ペーパーちゃん。私が教えてあげるから。貸し切りにしてもいいけど?」


「そこまでしなくていいですから!」


「わかったわ」


「でも現実リアルのシェリーさんに会えるなんて! 先輩には黙ってますね」


「私も楽しみにしてる」


「私も会いたいよ~」


 不貞腐れてるペーパーをアストレイアとシェリーがなだめる。


「まずはスプリングくんに下着を選んでもらって、彼の好みを知ろうね。そして、旦那に相手させてる間に私たち二人で勝負下着を選びましょう」


「はい!」


「うぅ~いいなぁ~。って、そろそろ時間かしら」


「そうですね」


「そうだね」


「名残惜しいけど、そろそろ第一回女子会を終わりましょうか。これからも定期的に開催します。次は二人のデートの内容を聞くから。だから、第二回は来月くらいね。お泊まり旅行の作戦会議もするわ。そして、できればいつか現実リアルで女子会も行いたいわ」


 ペーパーの言葉にシェリーとアストレイアが頷く。


「それでは第一回女子会を終わります。本日はありがとうございました」


 こうして第一回女子会は閉会した。

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