第25話 女子会 その3
「さて、おばさんの話とアドバイスは終わり。最後はアストレイアちゃんね」
シェリーの話が終わり、とうとうアストレイアの番が来た。アストレイアは覚悟を決める。
「何から話せばいいですか?」
「そうね。出会いから聞きましょうか」
「わかりました」
ペーパーに言われ、アストレイアは彼との出会いを思い出す。
「先輩と出会ったのは中学1年の時です。入学して友達になった、えーっと、AちゃんとBちゃんに紹介されました。先輩はAちゃんのお兄さんで、Bちゃんは二人の幼馴染です。最初は全然仲良くありませんでしたね」
「アストレイアちゃん、一つ聞くわ。まおーくんとAちゃんとBちゃんの関係よ。ラノベみたいな関係じゃないわよね?」
「Aちゃんと先輩は実の兄妹ですよ。Bちゃんとも本当の兄妹のような関係です」
「シスコンとブラコンは?」
「あぁー。シスコンブラコンですね。仲いいですねあの三人」
「いきなり強力なライバルの登場?」
「違いますよ。先輩に求められたら断らないくらいの好意は持っているそうですが、私を応援してくれるみたいです。先輩とくっつけようとしてますね。先輩との仲を隠してるつもりなんですが・・・」
絶対隠せてないだろ、という目つきでシェリーとペーパーがアストレイア見てるが、彼女は気づかない。隠しきれてるはずなのになんでだろう、とアストレイアは首をかしげている。
「話を続けますね。私、自慢ではないんですけど、容姿が整っています。今でも学校でマドンナって言われているみたいですし。小学校から男子から告白されたり、女子から嫉妬されたりしてました。でも、先輩と初めて会った時、彼は私に全く興味を持ってなかったんですよね」
「えー。信じられないわ。今はあんなに好き好きオーラ出してるのに」
「そのときは意外でしたね。あらゆる場所で男性たちから嫌な視線を向けられていたんですけど、先輩は一切ありませんでした。それで普通にAちゃんのお家にも遊びに行くことができましたね。先輩も私の男嫌いにすぐに気づいたみたいで、ある程度距離を保ちながら、もてなしてくれました」
「スプリングくん意外に紳士的だからね」
シェリーがスプリングの印象を述べる。アストレイアは頷き、話を続ける。
「中学に入ってすぐ、私いじめというか、嫌がらせされたんですよ。フラれた男子とか嫉妬した女子から。その当時は、愛想笑いをしてましたからね。良い子ちゃんでした。で、男子に変な期待を持たせちゃったり、女子から陰口叩かれてました。でも、AちゃんとBちゃんだけが味方でした。あと、一応先輩も」
アストレイアは遠くのほうを見て昔を思い出す。
「6月くらいでしたか。バカな子がいたんですよ。私の顔とどっかのグラビアアイドルの写真を合成してばら撒いたんです。それを知った時、心が疲れちゃいました。必死で我慢してたんですけど、数日後先輩の前でぶっ倒れたんです」
「それで・・・どうなったの?」
「先輩が助けてくれましたよ。もう、必死の形相だったらしいです。AちゃんとBちゃんに後から聞きました。で、目覚めたら病院のベッドの上でした」
シェリーが立ち上がり、アストレイアの隣に座る。そして、彼女を抱きしめた。ペーパーもアストレイアの隣に移動し、彼女の手を握る。アストレイアは恥ずかしそうにしている。
「あはは。ありがとうございます。私は大丈夫ですよ」
シェリーはアストレイアから体を離すが、ペーパーとは反対の手を握る。左右の手を握られながら、アストレイア目を瞑り、当時のことを思い出す。
「両親から聞いたんですが、先輩がいろいろしてくれたみたいです。救急車呼んだり、学校や両親にもいろいろと。病院にAちゃんBちゃんは毎日来てくれましたね。先輩も来てたみたいですけど、男嫌いの私を気遣って病室まで来ませんでした。まぁ、先輩の様子は二人が詳しく教えてくれました。2週間くらいで退院し、私は家に引きこもりました。と言っても、学校に行こうとしても両親に止められたんですけど。で、その時出会ったのがアニメやゲームです。どっぷりハマりました」
あはは、と恥ずかしそうにアストレイア笑う。
「その時期じゃないかしら? このゲームが発売されたのは」
「そうです。運よく手に入りました。父におねだりしたら、あっさりと手に入れてくれましたね。手に入った時、部屋で高笑いしました。で、毎日遊んでましたね。ソロで一日中ログインしてました」
「その時から知り合いだけど、気づかなくてごめんなさい」
「私もごめんなさい」
シェリーとペーパーが謝ってくる。アストレイアは謝ってくる二人に慌てて言葉を返す。
「いえいえ。お二人と出会ったのはいろいろと解決した後でしたから。話を続けますか。ログイン初日は確か8月1日からでしたね。ログイン初日からずっと一歩も動かず、始まりの街の噴水の淵で寝ている人物がいたんです。まぁ、先輩ですが。一目でわかりましたね。でも、話しかける勇気がなくてスルーしてました」
「ああ。なんかいたわね。一週間くらい寝てなかった? あれ、まおーくんだったのね。変人って呼ばれてたわよ」
ペーパーが当時のことを思い出す。
「そうです。8日目に、やっと勇気出して話しかけたんです。何してるんですかって」
アストレイアは当時のことを思い出して明るく笑う。
「パチって目をあけて、一目で私だと気づいたみたいです。私、髪型とか印象とか結構変えていたんですけどね。お二人は<暁>のタクトさんをご存知ですよね? 彼も私や先輩と同じ学校ですが、私に気づいていないみたいですし。でも、先輩は一瞬で私に気づきました。驚いてましたよ。あの後から学校にも行ってなかったので。そりゃあ、ゲームで呑気に遊んでたらびっくりしますよね。で、先輩は私を見て、安心した顔で言ったんです。『お前のことを考えてた』って。ズキューンってきましたね。一瞬で恋に落ちました」
キャー、と女性二人が黄色い悲鳴を上げる。
「まおーくんやるわね!」
「スプリングくん男らしい」
「先輩には秘密ですよ。それで、先輩を強引にパーティに誘って連れまわしました。その後お二人に会いましたね」
「アストレイアちゃん。ゲームの中の男性は大丈夫だったの?」
「ダメですよ。ものすっごく冷たく対応していました。何かあれば容赦なくGMコールでしたね。セクハラ設定も一番厳しいのにしてました。今もですけど。他の男性は私に触れることもできません。なぜか先輩だけは触られてもいいって思いました。セクハラ設定で先輩は除外してます。というか、先輩には設定かけていません。先輩は私に触り放題です」
アストレイアは悪戯っぽく笑った。
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