第22話 男子会 その3

 

 あれから、スレッドに詳しい話を聞いたり、アマルガムの女性経験を聞いたり、スプリングとタクトは大人の男性二人からたくさんの話を聞いた。もちろん、仕事の話も少し聞いている。


「そろそろスプリングくんにお話を聞きましょうか」


 スレッドから話を振られ、スプリングは覚悟を決める。アマルガムとタクトも興味深げだ。


「何から話せば?」


「お前たちの出会いは?」


 タクトの言葉に、アストレイアと出会った時のことを思い出しながら、スプリングは話し始める。


「この街の噴水のところで寝転んでたら彼女から話しかけられました。何をしているんですかって」


「なんて答えたんだ?」


現実リアルのことを考えてるって言いました。その時、ちょっと悩み事があって、それについて考えてました」


「そうですか。それから彼女とパーティを組んだのですか?」


「ええ。彼女に言われるままに。それからずっと振り回されています」


「お前ドМだな」


「スプリングの坊主、ドМだぞ」


 タクトとアマルガムの言葉にスプリングは、違うっ!、と反論する。スレッドに助けを求めるが、ニコニコ笑顔で何も言ってこない。


「で? どこまでいったんだ?」


「アマルガムさん。そんなに気になりますか?」


 アマルガムだけでなく、タクトとスレッドも頷く。スプリングはため息をつく。


「はぁ。頬にキスです」


「うほー! ついにやったか! 唇にはしてないのか?」


「してません」


「ハグは?」


「それはいつも・・・」


「いつも?」


 スプリングはつい口が滑ってしまった。スレッドは微笑んでいるが、タクトとアマルガムのニヤニヤがうざい。


「まぁ、彼らは普通に街中でお姫様抱っこをしていますし」


「スレッドの言うとおりだな。そういえば坊主。巨乳好きって噂があったんだが? 勇者が叫んでたとか何とか」


「彼女が勘違いして言っただけです。俺は巨乳好きではありません」


「そっか。勇者胸小さいもんな」


「はぁ。彼女にそれ言わないでくださいね。機嫌取るのが大変なんですから」


 スプリングはため息をつく。タクトがニヤニヤしながら聞いてくる。


「で? いつ好きになったんだ?」


「さあ。いつの間にか、ですかね」


「坊主たちは現実ではどうなんだ? もっとすごいことしてんのか?」


「現実だからしてませんよ。ゲームの中だけです」


「あっ! こいつら体育祭で、みんなの前でお姫様抱っこしてましたよ」


「あれはあいつが目が回ったからで・・・。ってタクトお前!」


 思わずぽろっと秘密をこぼしてしまった。アストレイアの正体が後輩の東山伶愛だということは、タクトは知らなかったはずだ。


「やっぱりな。昔からお前たちには何かあると思ってたんだよ。カマかけてみた」


 スプリングは自分の失敗を悔やむ。秘密を知られたくない人物に知られてしまった。


「坊主たちどういうことだ?」


「勇者ちゃんは俺たちの学校の後輩みたいなんすよ。それもマドンナって言われるほどの人気者。現実では少し面識があるだけって言ってたんですけどね。勇者ちゃんはこことあっちでは全く見た目も性格も違うので確信を持てなかったんですけど・・・。今まで秘密にしやがって! あっちでは仲良くありませんよアピールしながら、こっちでラブラブとか爆発しろ! 死ね!」


 タクトはスレッドとアマルガムに説明して、言葉の後半はスプリングに向けて言った。


「現実の彼女に興味はありますが、個人情報というか、彼女がいないのに話すことではありませんね」


 スレッドがスプリングに向けて、今までずっと疑問に思っていたことを聞く。


「スプリングくん。私から見て、あなたたちは両想いのように見えるのですが、付き合わないのですか?」


「あぁー。俺も気になる」


「オレも。坊主聞かせろ」


「周りに知られたくないからしないってお互い同意してますね。なんかもう意味なくなり始めてますが。タクトには知られたし、妹たちも感づいているみたいですし」


「じゃあ告白しろ!」


「それは、場所とか雰囲気とか大事だから・・・」


「だから乙女かっ! はぁ。お前、肝心なところでヘタレるんだから」


 タクトがため息をつく。


「まぁまぁ。スプリングくんにもいろいろ考えがあるんですよ。では、新しい質問です。スプリングくんはアストレイアさんのどんなところが可愛いなと思いますか?」


「ぐっ! スレッドさん。結構ぐいぐいきますね。あぁー。なんでしょう。逆にちょっと皆さんに聞いてみてもいいですか? レイアのことどう思ってます? 印象とか」


「男性に冷たいというか、距離を置いている、そういう風に感じます」


「あー。そうですね。お前が傍にいないと冷たいな」


「スプリングの坊主がいないときに一度話したんだが、オレは二重人格を疑ったな」


 三人の答えにスプリングは頷く。予想通りだ。


「そう。レイアは男嫌いなんですよ。基本的に人と距離を置いています。そんな彼女が俺と二人きりになると、思いっきり甘えてくるんですよ。手をつないできたり、膝枕やハグを要求してきたり。かまってちゃんなんですよ。そこが本当に可愛くて。胸に顔をこすりつけてスリスリしてくるのとか、心の中で悶えてます」


「お前、キャラ変わってないか? なんか気持ち悪いぞ」


 アストレイアの可愛さを自慢するスプリングに、心配するような目を向けるタクト。


「気持ち悪いってなんだよ」


「タクトくん。スプリングくんは本当にアストレイアさんのことが好きなんですよ。タクトくんにもスプリングくんの気持ちがいずれわかりますよ」


「おう。そうだぞタクトの坊主。それにスプリングの坊主もまだ言わなくていいかなって思ってても、事故とが病気とかで急にぼっくり逝くかもしれないんだ。後悔だけはするなよ。これは人生の先輩からの助言だ」


「アマルガムさんの言う通りです。私も学生の時、事故で友人をなくしましたから。言える時に気持ちは伝えたほうがいいです。ですが、場所とか雰囲気も大切ですからね。お二人とも頑張ってくださいね」


 いい感じに話がまとまる。男子会が始まってから結構な時間がたっていた。時間がたつのは早い。


「今回はこの辺でお開きにしましょうか。とても楽しい時間でした。もしよければ定期的に男子会を開催指定のですがどうでしょうか?」


 スレッドの言葉に、スプリングとタクトとアマルガムの三人が頷く。


「全員賛成ということで、近いうちに第二回を開きましょう。誰か誘いたい人がいたら誘ってみてくださいね。では、第一回男子会を閉会いたします」


 こうして、第一回男子会が閉会した。



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