第3話
この本を読んでいると、社会党はほとんど安全保障論議に時間を費やしているのである。経済のことなどほとんど語られていない。市場経済は認めないのだから、語る必要もないのかも知れない。何かにつけてこの党はオールorナッシングのところがある。社会党の「非武装中立」論の根拠の一つに社会主義国は平和勢力であると考えがある。社会主義を掲げる以上当然である。日本を民主主義国家にしたという自負をもつアメリカは当然責めては来ない(日本が社会主義になれば、保障はあるのかな?)。社会主義国同士の中ソ対立、国境紛争には対応を〈おうじょう〉したと思う。
国民は理想部分の平和(非戦)を社会党に託し、暮らしという現実部分、経済を自民党に託したのである。防衛という超現実はアメリカにが、云わずとも内心であろう。賢明といえば、賢明。ずるいと云えばずるい。社会党を引きずりましたのは国民のこの分断した思いのような気がする。そこに「強靭な〈体力〉としなやかな戦略が必要」と云われても、社会党が可哀想である。
1991年のソ連崩壊後の93年の総選挙では、社会党は55年体制以来最低の議席数となった。長年の宿敵であった自民党が大敗した選挙であるにも関わらず、社会党は却ってその存在感を失うこととなった。55年体制の崩壊である。それでも野党第一党として細川政権に参画、羽田政権をへて、小沢にいじめられ、あろうことか自民党と連立、村山内閣である。これにはびっくりした。そして首相として「安保堅持」「自衛隊合憲」としたのである。下部組織の議論を経ず、党内論議もなく、三分の一長く支持してきた国民に問うこともなく、社会党の最終章が社会党の首相の一言で決まったというのは何とも皮肉であったことか。
89年11月ベルリンの壁崩壊。それを受けて12月マルタ会談で米ソ首脳、冷戦終結を宣言。90年10月東西ドイツ統一。91年12月ソビエト崩壊。世界に激震が走る。その間社会党は、土井ブーム、89年7月参議院選(リクルート問題)では与党を過半数割れに追い込み、続く1990年2月の衆議院選(争点は消費税)でも社会党は大幅に議席(85~136)を伸ばした。1993年7月の半減(70議席)を誰が予想しただろう。出来た新党の間に埋没したのである。自民党は275から223に。しかし自民から出た新生党、さきがけを加えると291になることに注目しておく必要がある。出ても、出ても増えるのである。どこから湧いてくるのだろうか?やはり下部組織、地方議員たちがしっかりしているのだろう。国会議員が何人か集まって新党。すぐ消えるわけだ。
1986年、社会党は第50回大会で『新宣言-綱領』をする。階級政党から国民政党への脱皮を謳ったのである。しかし、「非武装中立」を降ろすことはなかった。安保を認め、自衛隊を合憲とする議論をするならこの大会を於いてか、89年冷戦の終結時に、改めて追加に入れるかであった。しかしそれは出来なかったであろうし、しても凋落は避けられなかっただろうと思う。
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