第2話 

社会党の理想主義とは「非武装中立」である。具体的には講和・独立を前にした1950年の党大会回で決められた平和4原則「全面講和,中立堅持,軍事基地反対、再軍備反対」を指す。当然自衛隊は認めず、安保は反対となる。これを放棄するとき党は瓦解する。事実瓦解した。ある意味、あれほど愚直に守ろうとした憲法9条に〈縛られた〉悲しい党とも思えるのである。憲法9条なんて「字に書いたもの、解釈でいかようにも」と現実路線を進んで来た党と比べるとき、尚更にである。


憲法9条は文言だけを素直に読めば、誰だって軍という存在は認めていなくて、自衛隊は違憲で、外国軍の駐留も違憲であるとなる。当然、日米安保条約も認められないものとなる。冷戦がなければ社会党は悩まなくて済んだのだ。しかし現実はそうはいかない。アメリカは再軍備を要求してきた。国家は軍備を持つのが常識の吉田茂だが、経済復興を優先事項と考えて左翼バネを利用して「警察予備隊」7万5千人でアメリカを妥協させた。


戦争はこりごり、2度と軍国主義は嫌という国民の思いが背景にあったとしても、この憲法9条はアメリカによって決められたものであることは事実である。安全保障をどうするのか、軍隊は保持するのか、しないのかの議論なしで決められたものである。占領下では致し方なかったのだろうが。しかし国民投票にかければ国民は憲法9条に圧倒的に賛成票を投じたと思う。そういう意味では「押しつけられ」でもなんでもない。国民に信を問うべきであったと思うのだ。


日本の軍備に関しては、アメリカも、政権保守党も、野党も、国民も敏感にならざるを得ない。憲法9条の存在である。


ではドイツではどうだったのだろう。1955年、西ドイツがアメリカ・イギリス・フランス三国とのパリ協定を締結、主権回復とともにNATO加盟を条件に独自の軍事力を持つことが認められたのである。再軍備に対して反対はなかったのか、国内では野党社会民主党は反対し、若者を中心として徴兵制に反対する運動が起きた。しかし、ドイツは分割占領された国である。ベルリン封鎖とか冷戦の過酷な現実を目のあたりにしているのである。それとドイツは基本法である。東西統一を待って憲法を制定するとした。しかし基本法のままである。基本法の改正は50回も行われている。基本法改正には国民投票を必要としない。国会議員の三分の二でOKである。そういう違いがある。

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