「異世界に全裸で召喚されました～女神とたたえられた私が王の花嫁になるまで～」

第10話イオニアス王国のお国事情～騎士は王子様の愛玩犬になりたかった･2

―ドミニク視点―

レヴィン王子様は不憫（ふびん）なお方だ。

いや現王に殺害された、前王の側室七人、レヴィン王子の腹違いの兄君八人、腹違いの姉君六人にくらべれば、レヴィン王子様はまだ幸せなのかもしれない。

現国王がレヴィン王子を殺さなかったのは、愛情や同情からではない。

世継ぎのいない国王にとって、同腹のレヴィン王子様は都合のいい血のスペアだった、ただそれだけのことだ。

スペアはスペアでしかない。より使い勝手のよいスペアが生まれればとって変わられる。

現国王に世継ぎが生まれたら、レヴィン王子様は殺されるだろう。

そんなタイミングで現れたのが、漆黒（しっこく）の女神。

【女神の与える愛で、国王の気力が満ち、国の憂（うれ）いをはらい、繁栄をもたらす】と言い伝えられている。

王が子宝に恵まれないものは、不吉なこととさるているイオニアス王国において、王に世継ぎが生まれないのは、これ以上ない憂いだ。

漆黒の女神と言えば聞こえはいいが、要は王の子を孕（はら）む腹にすぎない。

なんでその女が、よりによってシェーンフェルダー公爵領に落ちてきて、レヴィン王子様の前に現れるんだよ！

落ちるなら王宮の池にでも落ちろよ！

王に世継ぎが生まれれば、レヴィン王子様は殺される。

レヴィン王子様を死の淵（ふち）においやる女を、レヴィン王子様が自ら王に差し出すなんて……神様はむごいことをなさる。

しかもあろうことか、レヴィン王子は漆黒の女神に恋をされてしまった！

王より先に子を作ってはいけないレヴィン王子様は、結婚もできなければ、女遊びもできない。

王に子が生まれたら生まれたで、血のスペアの役目を終えた王子様は殺される。

レヴィン王子様は一生童貞でいるしかない。

年頃になられたレヴィン王子様が女と話しているだけで、「王より先に子を成し、謀反（むほん）をおこす気だ！」と疑われるから、王子様は気がるに女と話しもできない。

十八歳なんてめちゃくちゃ女とヤりたい年ごろなのに、ヤるどころか二人きりになることも許されない。なんてかわいそうなレヴィン王子様！

そんなわけでレヴィン王子様は、ここ数年、女とまともに話したことがなく、目を合わせたことすらない。

そんな国で一番、禁欲的（ストイック）に生きてるピュア童貞のレヴィン王子様の前に、全裸で現れるなんて、なにを考えてるんだあの女神！

刺激が強すぎて、レヴィン王子様がショック死したらどうするんだよ！

このビッチ！　ビッチ女神！

幼い男の子が、女の子のパンツを見ただけで好きになってしまうことがある。

パンツを見たドキドキを、恋のときめきと勘違いしてしまうあれだ。

レヴィン王子は生まれて初めて女の裸を見たドキドキを、恋のときめきと勘違いしてしまったのだ。

よく見てください王子、伝説の女神様に対して失礼ですが。

女神様の顔は普通よりまあまあ可愛い程度、胸もあまり大きくないし、スタイルも人並み。

女神ってチートな肩書きをのぞいたら、なんにも残らないごくごく平凡な娘なんですよ？

王子がその気になれば、ナイスバディの絶世の美女でも、国一番の美少女でもものにできるというのに……。

王子にはそれだけの肩書きと、顔と、能力があるのに。

しかも好きになった相手を、おそらくはレヴィン王子の初恋の相手を、兄王に差し出す役割をになわせるなんて……神様のドＳ、鬼畜！

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