第43話 悪夢

夢を見ていた。

それが、夢とわかる夢。


いわゆる明晰夢。


夢の中で、僕は宇宙を飛んでいた。

宇宙には空気がない。

きらめく星も見られない。


でも、ここは夢の中。


空気もあるし、きらめく星も見られる。


あそこにある大きいのは、月だ。

月自体は、さほど大きくないが、距離的にはでかく感じる。


月で、知っている女の子が手招きをしている。

ルナさんだ・・・


僕の名前は、太陽。

彼女の名前は、ルナ。

ラテン語で、お月様。


実際は、太陽のほうが、はるかにでかいが、

地球からの距離は、ほぼ一緒。


出来すぎている。


宇宙を泳ぎ、僕は月に着く。

ルナさんが、出迎えてくれた。


ウサギたちが、お餅をついている。


ペッタン、ペッタン・・・


杵を渡される。

僕が餅をつく。

ルナさんが、こねる。


ペッタン、ペッタン・・・


それを、お餅の形にしていく。

器用に四角く・・・四角く・・・


「ルナさん」

「何?太陽くん」

「お餅は丸く。それが基本」

「ええ。お餅は四角いんだよ」

「四角いと食べにくい」

「丸いと切りにくい」

「邪道だ」

「どっちが」


くだらないことだと思う。

でも、お餅は丸い。


これだけは、譲れない。


チュン、チュン、


目が覚める。

僕は汗だくになっていた。


「どうしたの?太陽くん」

ルナさんが、僕をのぞき込む。


断っておくが、一緒には寝ていない。

僕の叫び声に、彼女が入ってきた。


「悪夢を見た」

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