第22話 待宵草(まつよいぐさ)

日本月見草教会というのがあるらしい。

それによると、僕たちが普段、月見草と呼んでいるものは、月見草ではなく、

待宵草(まつよいぐさ)という、月見草の仲間らしい・・・


ややこしいものだが・・・


月見草と訊いて、「黄色」と答えれば、それは待宵草で間違いない。


「太陽くん、うんちくはいいから、出かけるよ

「どこに?」

「言ったでしょ!月見草収穫に」

「まずくない?」

「大丈夫、本当に収穫するわけではないから」


ルナさんの言う事は、わからなくもない。

でも、時期は少しずれている気がする。


日曜日に駅に来てくれと言われた。


「太陽くん、ごめん待った?」

「ううん、今来たとこだよ」


今時のベタな展開だが、ある意味では理想。

ときめいていたいものだ。


「で、ルナさん、どこ行くの?」

「富士山」

「静岡の?」

「うん」


富士山のある静岡県は、新幹線ののぞみは止まらない。

ひかりもあるが、こだまにした。


そのほうが、旅行気分が味わえる。


「本当に収穫しないって、どういうこと?」

「もう話すね、写真に撮るんだよ」

「スマホで?」

「うん」


他愛のない会話に、心が躍る。


こだまは走る。

目的地へ向かって・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る