第16話  命名

「はい、紙と墨と筆」

ルナさんに、渡される。

というか、準備される。


「本当に、今・・・決めるの?」

ルナさんは、頷く。

眼で脅している。


奥さんを見ると、お願いしますの表情をしている。


「奥さん、男の子ですか?女の子ですか?」

「女の子です」

「苗字は?」

「谷口です」

谷口さんか・・・


「失礼ですが、奥さんの名前は?」

被らないようにしないといけないので、尋ねるのは礼儀だろう。

多分・・・


「私は、優といいます。ちなみに旦那は、なつきといいます」

「ご丁寧にありがとうございます」


筆を持つ。

解放してくれそうにない。


名前の言うものは、一生残る。

いい加減には、決められない。


「言っとくけど、安直に私の名前からとったら、

いくら、太陽くんでも往復ビンタだからね」

読まれていた・・・


「それと、花の名前からは、そのままとらないように」

「どうして?」

「花言葉」

ルナさん、エスパーですか?


「それと、星の名前も却下」

「どうして?」

「きらきらネームになりかねない」

ルナさんの発言、世間に挑戦してる・・・


確かに、僕には一番の叱り方だ・・・

ルナさんには、勝てない・・・


勝てない・・・

そうだ・・・


僕は、筆に墨をつけ、半紙に名前を書いた。


「瀬梨(せり)」と・・・



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