第15話 叱り方
「どちらさまでしたっけ?」
気付かないふりをした。
「あの時の妊婦です。おかげさまで、無事に子供を産む事ができました。
主人も感謝しています」
「ああ、あの時の・・・ご無事で何よりです」
ルナさんは、知っていたのか・・・
世間は狭い・・・って、感心している場合ではない。
「で、あの時のお礼をしたいのですが」
「いえ、お礼なら、もういただきました」
「私は何も・・・」
「今の、『ありがとうございます』の、一言です」
そう、それだけでいい。
かっこつけと思われても、構わない。
「太陽くん、ちょっとこっちへ来て」
ルナさんに、呼ばれてついていく。
ルナさんは、僕の眼を見た。
「さっき、君を叱ると言ったよね」
「うん」
既に眼が怖い。
「君は、繊細なので、何かを言えば、引きずる。
でも、君を叩くなんてことはしたくない」
確かにそうだ。
僕は、傷つくのが怖いかもしれない。
「なので、君には一番効果的な、叱り方をする」
なんだ?
「すいません。例のもの、持ってきて下さい」
「ルナちゃん、物扱いしないでくれる?」
奥から、奥さんが赤ちゃんを抱いて出てきた。
「で、叱り方と言うのは?」
「この子の名前付けなさい」
「ワンスモア」
「この子の名前つけなさい」
どうやら冗談ではないようだ。
「まだ、命名してなかったんですか?」
奥さんを見た。
「出生届けはしましたが、命名は後日にしてもらいました」
確か14日以内のはずだが・・・
この辺りは知らない。
「いい、太陽くん」
「何でしょうか・・・ルナさん」
「名前というのは、一生残るの。いい加減には、付けられない。
だから、責任持って、君がつけなさい。
これが、君の一番効果的な叱り方」
人さまの子を、そんなのに利用していいわけがないが・・・
「もちろん、奥さんも旦那様も承諾済み」
呼んでいたのか?
僕の行動を・・・
「で、いつまでに・・・」
「今ここで」
「そんな急には」
「明日で14日目だから、今日決めないと間に合わない。
だから、今すぐ決めなさい」
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