第9話 種

「で、あなたをこちらへ招いた理由ですが・・・」

「間違っても、『婿として迎えたい』なんて、言わないで下さいね」

その言葉に、ご両親は顔を見合わせ、そしてルナもいっしょになって、笑った。


かなりというか、相当傷つく。


「ご安心を、そのような事ではありません」

胸をなでおろした。


「太陽くん、そんなに私が、嫌い?」

ルナが上目づかいでみる。

「やめろ。君のキャラじゃない」

「へへへ」

この女、絶対に結婚出来ない。


「では、どんな御用ですか?」

ご両親は、真剣な顔つきに戻る。


「まず、ここは本当に月の裏側です。

セットでもありませんし、あなたを弄んでもいません」

もう、どっちでもいい。


「後、ここの事は内密に願います」

誰も信じまと思うが、了解しておいた。


「で、本題に入ります」

「手短に頼みます」

「せっかちだね。太陽くん」

「生まれつきだよ、ルナさん」

埒があかない。


「この花を、ご存知ですね」

お父さん(ややこしいので、こう表記する)が、一輪の花を見せる。


「月見草・・・ですね」

「さすがに、ご存知ですね」


夕暮れ時に咲いて、明け方にしぼむと言う花。

花言葉は、片思い。


「その花がどうかしましたか?」

「実は、ここに月見草の種があります」

「種・・・ですか?」

「この花をあなたに育てていただきたい。月では育つ事ができません」

「なら、その花は?」

「今日、ルナが持ってきたものです」

ルナさんを見たら、頷いた。


「でも、どうして僕がですか?他にも適任者が・・・」

「この花は、あなたそのものです」

「そのもの?」

褒め言葉として、とっておこう。


「実は、この種は、ただの月見草ではなにのです」

「と申しますと?」

「この花が全て咲いた時、私たちがあなたを招いた本当の理由を、お話します」

面倒だが、早く帰りたい。


それに、花の栽培には興味もあった。


「わかりました。おひきうけします」

「では、100粒、お渡しします。」

「そんなにですか?」

「ええ、頼みましたよ」

花の種を受け取った。


ウサギから渡されるのも。何か変だ。


「じゃあ、太陽くん。帰ろうか?責任持って送るから」

何だか情けないが、言葉に甘えよう。


ていうか、送ってもらわないと帰れない。


そういえば、お母さんである、かぐやさんはあまり話さなかったな。

寡黙な方なのか・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る