第3話 恩

「新聞、見たよ。絶対に、○○くんでしょ?」

「違うよ」

「隠すところが、また素敵」

女子と陽キャラが、会話している。


女子は僕を見て、「あんたには、できないわよね」という視線を送る。

それで、構わない。


≪与えた恩は忘れなさい。受けた恩は忘れてはいけません。≫


そう言いきかされて育ったし、僕もそう思う。

うん、あの人を助けたのは、僕ではない。

救急車だ。


そして、お医者さん。

僕ではない。


そして、下校時・・・


「ねえ、」

声がしたが、かけられたのは、僕ではないだろう。


「ねえ、△△くん」

「僕ですか?」

「うん」

笑顔で頷く。


この子は、誰だ?

見覚えがあるが・・・

名前は出てこない・・


「昨日、見てたよ」

「何を?」

「妊婦さんを助けたのは、君でしょ?」

見られてたのか・・・


でも、面倒だ。


「違うよ。人違いだ。僕には出来ない」

そういって、帰ろうとする。


「どうして、名乗り出ないの?『あれは僕です』って・・・」

「だから、人違いだって。仮にそうだとしても、当たり前の事だ。」

かかわらないでほしい。


「じゃあ、ひとつだけ訊かせて」

「何?」

「私の名前は?」

「知らん」

「クラスメイトでしょ?」

「興味ない」


普段は、僕の事は無視している。

なのに、何で構う?


理解に苦しむ。


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