第2話 当たり前の事

古代の人は、満月の日にしか、結婚しなかったと言われている。

これは、満月の時期に排卵を迎える女性が多いためらしいが、

まあ、こんなうんちくはどうでもいい。


帰り路


苦しそうにうずくまっている、若い女の人がいた。

買い物の帰りなのか?

トートバックから、食料品がこぼれ落ちている。


「どうかなされました?」

思い切って声をかけてみた。

お腹が大きい。

妊婦さんだ。


陣痛か?


「あっ、すいませ・・くる・・・」

声にならないようだ。


「救急車、呼びましょうか?」

「・・・おね・・が・・・」

そこからは、何度もうなずいた。


僕は、119番に連絡をした。

この辺りの場所は、詳しい。

説明をすると、すぐに救急車が来てくれた。


後は、任せよう。

そう思い、救急車を見送った。


あれ?

トートバックから、こぼれた食材がそのままだ。

僕はそれを、トートバックにつめて、交番に届けた。


おまわりさんから、住所と名前を訊かれたが、

答えずに帰った。


当たり前の事をしただけだ。

感謝されるほどでもない。


数週間後


その女性が、新聞に載った。

旦那さんと、かわいらしい赤ちゃんを抱いている。


「私が、道でうずくまっている時に、助けてくれた男の子がいました。

制服からして、○○高校だと思います。

お礼がしたいので、ご連絡下さい」


個人情報はまずいと見えて、新聞社に連絡するように書かれている。


僕は・・・無視。

感謝される程の事はしていない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る