脱出

「ごめんごめん、ナブラ驚いた?

すぐ元に戻すよ。


パチン!」

ラプラシアンはそう言うと、自らの両手の平でパチンと一回手を叩いた。


「あれ、色が元に戻ってる……」

ナブラは真っ先にラプラシアンの顔をもう一度見た。

すると、ラプラシアンの表情が元のほんのり赤みがかった健康そうな顔に戻っていた。

それに、口の中や、自分の服の赤い模様もはっきりと確認できた。


「へぇ~!

驚いた。

ナブラの言う通り

あんな小さな押し入れの中にこんな広い世界があって、しかも人が住んでいるなんて……。

父さんまだ信じられないよ!」


「ホントだ~!

私もこんな世界があるなんて、

驚きだわ……。


ところで、あなたラプラシアンさんって言うのかしら?」


「そうです。あなたはナブラくんのお姉さんなんですね?

ボクのことはラプラシアンって呼び捨てにしていいですよ」


「あなた、まだ小さいのに年上の私に敬語で話すなんてしっかりしてるわ~」


「そんなことないですよ。

それに、ボクはナブラくんと最初に会った時も思ったんですが、

ナブラくんだけじゃなく、

お姉さんとそっくりな人とも昔どこかで会ったことがある気がするんですよ。

だから、その人には僕敬語使ってたからついまた敬語が出てしまいました」


「ラプラシアンくん?

私に顔をもっとよく見せて!」


「お姉ちゃん、ラプラシアンの顔じろじろ見て気持ち悪いよ~」


「ナブラ、あんたは少し黙ってなさい」


「は~い」


「アハハ!

お二人姉弟揃って仲がいいんでしね」



「仲良くな~い!」

ナブラとナブラの姉な二人声を揃えて即答した。


「ところで、

ラプラシアン。

私も君と昔どこかで会った気がするわ」



「ねえ、話の間に割り込んで悪いんだけど

父さんも話をしていいかな?」


「は、はい」

ラプラシアンは慌ててナブラの父親に話をふった。


「ここってみるからにどこかの牢獄の中だよね?

状況的にラプラシアン君が捕まって閉じ込められているのは聞いていたけど、

父さん達部外者が三人も増えてたらすぐに気付かれるんじゃないか?」


「それは心配いりません。

ボクは自分の力ではこの牢獄を出ることは出来ませんが、牢屋番の目には僕以外の姿を透明に見せたりとか上手くカモフラージュは出来るんです」


「そりゃすごいね~!

でも、そんなすごい能力があるなら

どうして君は奴等に捕まってしまったんだい?」


「それは、ボクの足音とか匂いとかの気配からでしょうね。

見てください。あの番犬です」


「成る程ね。

ラプラシアン君の能力はこの世界では有名だったから、

奴等に対策をされたんだね?」



「多分そうだと思います。

ですから、ボクはこの牢獄の鍵を開けて牢獄の外に出て、

あの番犬に見つからないようにアジトから脱出したいんです」


「それで、僕の助けを借りたかったんだね」


「違うよ。

ボクはナブラを本当はこんな危険なことに巻き込みたくは無かったんだ。

ボクが母さんから昔もらっていつも身につけているこのペンダントがあの時偶然光りだしたんだ。

そうしたらナブラ、君がボクのところにやってきたんだ」


「そうだったんだ……」


「ところで本題に戻るけど、

ボクは自分の力で脱出する。

だから君たち三人はその前にこのペンダントの光を当てて元の世界に返してあげるよ。

ちょっと待ってて。

あれ? おかしいな?

ボクの視界をカモフラージュする能力を使いながらだと上手くいかないのかな?」


「ラプラシアン?

ありがとう。でもいいよ。

無理しないで」


「そんなこと言ったって、君たちには何の……」


「私も珍しくナブラと同意見だわ。

実際、ペンダントで元の世界に戻れないのは事実だから、

今、誰のせいとかそんなこと言ってても仕方無いじゃない?

まずはここを抜け出して安全なところに行くことをみんなで考えましょう?」



「ありがとう、君たち……」


「ラプラシアン君、元気出して。

実はおじさんはこんな道具を持って来たんだ。

これで牢獄の鍵は壊せるよね?」


「ナブラくんのお父さん、

ありがとうございます」


「問題は、あの番犬よね~。

ほら、ナブラ?

あんたもそこでボケ~としてないで

何かいいアイデアが無いか真面目に考えなさい!」


「お姉ちゃん酷いよ。

僕さっきから真面目に考えてるよ~」


「あ!

僕一つだけ方法思い付いた!」



「ナブラ。

何かいいアイデアがあるの?

ボク達に教えて?」



「先にラプラシアン?

今から言う方法、一か八かだし

上手くいくかは全然わからないよ?

それでもいい?」

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