モンストラス・ムーンシャインに潜む必然

突然、眩しい閃光と共に、

ポラリスたった一人を除いて

周りの時間が止まった。

そして再びポラリスの前に素数空が現れ言った。


◇やっぱり君はアンナに会いに来ちゃったか……◇


「あんた、この前の素数空って人か?


俺、あんたとの約束守れ無かった……。

こんな結末になったのは約束を破った俺が悪いんだ。

だから、俺を煮るなり焼くなり好きにしてくれ!


だけど……、

これは勝手なお願いかもしれないが、もう1つだけ俺の頼みを聞いて欲しいんだ」


◇頼みっていうのはなにかな?◇


「アンナから完全に俺の記憶を消して欲しいんだ」


◇アンナから君の記憶を消すことは簡単さ。

でも、

君は本当にそれで幸せか?

アンナは本当にそれで幸せだと君は思うか?◇


「そ、それは……」

ポラリスは返答の言葉に詰まってしまった。


◇全ては確率の1つとして生まれ、

確率の1つとして出会い、

確率の1つとして別れるんだ。


きみ達には見えないけれど、

数えきれない膨大な数の

現在(いま)この場所

**観測者**が存在するんだ。


例えばポラリス、

君が一個人の人生として

日々感じ経験している

これらの**現実**は

奇跡や偶然と呼ばれる

確率で事態が移ろい、

良くも悪くも

変化していく儚いものだって感じるだろう?


しかしだ、

全ての**観測者**を足し合わせた

**多元宇宙**全体の確率は……、

**1**になるんだ。

そして、

これだけはどんな状況であっても

決して

宇宙の真理なんだ。


だから、君とアンナは必然的に出会っているんだ。

そしていつも、

今だって君のすぐ側にいるんだよ◇


「アンナがいつも俺の側に?」



◇そう。

モジュラーの唄は既に知っているだろ?◇



「ああ、知ってる」



◇そのモジュラーの唄は、

どんなに遠く離れていても

**二つの物体が互いに影響し合う魔法の力**を

利用してお互いの距離を近づけてくれる。

だから、

君はアンナがまた暴れることがないように

まずは君の元いた次元に帰るんだ。

後は、わかるね……?◇



「お、おい!」

素数空はそこまで言いかけたまま

ポラリスの前から姿を消してしまった。



(あの唄がアンナとの距離を近づけてくれるのか……)

ポラリスは自分の生まれた次元に戻り、

見晴らしのいい高台へと向かった。


——————————————————————

↑【登場人物】

•ポラリス

素数空ダルマ

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