モジュラーの唄

***

真智達の回想※】〜


「谷先生? モジュラーって電話機の電話線の事ですか?」


「違う。まあ、真智が知らないのは無理はない。

うちが言いたいのは数学で扱うモジュラーや」


「何ですか? その数学のモジュラーって?」


「わかりやすく説明するのは難しいが、

変換しても変わらない特徴があるんや」


「う~ん、あたしいまいち理解出来ないんですが、

それがどうして歌と関係あるんですか?」


「歌と言うより音階の情報なんやけどな。

音声は音、つまり音波や。

音波は波の形で表すことが出来るんや。

ここまではわかるか?」


「はい。知ってますよ」


「先ほどのモジュラーの中には 楕円曲線っていう曲線で表せるものもあるんや。

そしてな、 この少年が断続的に生み出している音階の データをメロディーとして音声データにしたのがコレや。

真智はコレを見て思わんか?

波の形が通常ありえん形なんや!」


「ありえない音ですか?」


「そう。

通常の超音波は条件によっては人間にも聴こえるが、

これは不可能や。

わかりやすく例えるなら、これは超高周波数や!」


「超高周波数!?

そんなものがどうしてグリの記憶の中に?」


「そこまではうちもわからん。

しかし……」


「しかし!? 」


「……、やっぱええわ」


「谷先生、しかし何ですか!?

気になるじゃないですか!」


「これもうちの推測やし、

真智に説明するのも難しいんやけどな、

この音波、 量子力学的に見た時、

異なるエネルギー準位同士をすり抜けるんや!」


「はい!? 谷先生、ごめんなさい。

何を言っているのかさっぱりわかりません」


「真智は、重力子が私達の宇宙ブレーンと 他の宇宙ブレーンの間を行き来しているっていうことは聞いたことがあるか?」


「は、はい。 前に愛理栖に聞いたことがあります」


「それと同じや。

つまりな、波形のデータの部品が全く足らんのや。 少な過ぎるんや」


「谷先生、それはつまり……」


「真智もなんとなく理解してくれたか。

そう。

こいつの記憶に刻まれている唄は

量子的に見れば

存在しない可能性が高いってことや!」

***


——————————————————————

↑【登場人物】

真智まち

•谷先生

•グリ


※グリが初めて部室に登場、谷先生がモルモットと名乗るグリについて説明している場面です。

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