ポラリス ※回想~ポラリス視点
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回想〜
俺はポラリス。
亀のような硬い甲を背負い、
蛇のような両手両足を持ち、
顔と胴体は熊のような姿のカムイである。
俺の姿をみたものはみな
俺の事をバケモノや妖怪と言って逃げ出すが、
これでも俺はれっきとした妖精だ。
俺の眼には魔力があって、
これで様々な異世界の様子を視ることができるんだ。
どうだ?驚いただろう?
実はな、遡ること一か月前、
俺がいつものように異世界を観察していると、
ある※カムイの少女を見つけたんだ……。
森に囲まれた雪国。
彼女は、昔観察した人間のアイヌという集団の衣装に似た衣服をまとっていた。
「しくしく。
お父さん? お母さん?
どうしていなくなっちゃったの?
お友達も、近所のおばさんも、みんな……
私。寂しいよ……」
俺は最初はただ観察するだけでなにもしようとは思わなかったんだ。
でもな、その子は何日経っても……、一週間経っても泣き止もうとはしなかったんだ。
流石に俺も泣き続ける少女が心配になってな、ついに話しかけてみたんだ。
◇なあ、お前一週間ずっと泣きっぱなしだろ? 大丈夫か?◇
「え!!
だ、誰!?」
少女は俺の言葉が聞こえているようだった。
あ、ありえない。俺は異世界を視ることはできるが、干渉することはできないはずなんだ!
「ねえ? あなたは誰?」
俺が自問自答している間に今度は少女の方から俺に話しかけてきたんだ。
◇俺か? 俺はな、ポ……◇
「ぽ?」
俺は一瞬躊躇した。
そして考えた。
俺は可愛らしい少女とは違い毛深い大柄な生き物なんだ。
正直に答えたらきっと少女は俺のことを怖がるに違いない。
◇俺はポラリス。
君と同じくらいの年の少年だよ◇
「あなたポラリスって言うのね?
私はアンナって言うの。
消えずに残ったのは私だけかと思っていたけど、あなたもいっしょなのね!
よかった~!」
少女は元気をとりもどしたみたいだった。
◇なんだ!
お前元気じゃないか!
まったく、心配させるなよなー!◇
「ごめん、ごめん」
◇どうした? 急に泣き出して?◇
「ううん、なんでもないの」
◇ホントか~?◇
「うん!大丈夫!
ところで、
あなたポラリスだっけ?
私、君に会ってみたい!
いまどこにいるの?」
◇お、俺か……?
え~とな……◇
少女以上に生まれてから今までずっと孤独に生きて来た俺が、
まさか誰かに会ってみたいなんて言われるなんて考えてもみなかった。
そして、自分の醜い姿をさらしたくも無かった。
◇あ! そうだ!◇
「どうしたの?
急に何かを思い付いたような様子だけど……」
◇わかった!
お前の場所はわかってるから、
俺から会いに行く◇
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↑【登場人物】
•ポラリス
•アンナ
【解説】
アイヌ風の民族衣装を着た少女、
友達の熊?が出てきますが、
『くまみこ』のオマージュや二次創作ではありません。
文字を持たない文化をもつアイヌ民族から
物語の進行に関わるインスピレーションを受けました。
北極星の別名からポラリス、
北極星がある小熊座から『熊』、
北極星の妙見菩薩から
亀と蛇の玄武の姿 及び 全てを見通す視力
という設定を持ち出しています。
※カムイ
アイヌ民族の伝統的な世界観で、動植物や自然現象、人工物など、あらゆるものに宿っている霊的知性体とされる。
本来神々の世界であるカムイ・モシリに所属し、本来は人間と同じような姿をしている。
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