作戦

「ラジアナ?全く呆れたわ……。あなたなんてバカな真似を~」




「神ウニ!!」

ラジアナがそう叫ぶと、

ラジアナ一人を守る様に球状のバリアーが現れた。



「だってさ~。

みんなは沢山必殺技持ってるじゃん?


それなのにアタシはさ、こんな地味な防御技一つしか無いんだよ。


だから悔しくて自分で考えて苦労して編み出したんだよ~」



ラジアナはネイピアに

うつむき加減に口を尖らせ拗ねるように弁明していた。


「ラジアナ?

あなたのその能力だって使い方次第では少しは役に立つものよ」


「ネイピア〜。

あんたはどうしてそう言い切れるのさ?」


「あなたの神ウニはね、厳密には球状のバリアーで防御すると言うよりも球対称を維持しているって言ったほうがいいかしら?」


「球対称?

何それ、美味しいの?」


『ゴソゴソ!』


「え?

ねえ、ネイピア?

さっきから何お腹につけたポシェットに手ー突っ込んでんの?

それに、あんたってお腹に三日月型のポシェットなんかつけてたっけ?」


「あれでもない、これでもないわ」


「無視かい!」



「あったー!


ちゃーちゃちゃーちゃ、

ちゃららら〜!


ゴールデンボール!!」


「ネイピアー!

おのれはブラえもんかー!

世界観混ぜすぎや!

それに、その効果音カツレツ大百科でちゃうし」


「ラジアナあんたさー?

細かいことをいちいちうっさいわねー!

この2恥元ポケットはゲスって奴の発明を拝借したの!

私も良く知らないわよ!」


「あの……ネイピアさん?

おたくいつもとキャラ違いません?」


「あら!

お腹を空かしたラジアナのお口にフタをするのに丁度いいサイズじゃな〜い!

偶然ね〜♪」


「いや、あんたそれ絶対わざとやろ!

ネイピア、ちょっ!」


「さあ、ラジアナ♪

美味いかどうか食べてみなさい。

ほら、あ〜ん して♪

あ〜ん♪」


「無理無理無理無理!!」


「無理〜?

今、無理って聞こえたけど気のせいかしら?

ラジアナあんた、

自分の言った言葉には責任持ちなさい。

食べない。さあ!さあ!」


「やめてネイピア!

そもそもそれ、口よりも大きい!

ぐるじー、ぐるじー!

死ぬー!」


「ラジアナ?

あんたのリアクションつまらないんだもの。

もうからかうの飽きちゃったわ。

だから、からかうのはこの辺で勘弁してあげるわ」


「ぷはー!

冗談抜きで本当にちっ息死させられるかと思った!」


「さっき話した球対称ってのはね、それを動かした時。正確に言うなら ある対称操作を行った時ってこと。

それ自身と完全に一致するか又は重なるとき、

つまり動かす前と全く同じ状態になるってことよ。この無地のゴールデンボールを自分で回転させてみなさい?」


「う、うん。

(卑猥な事を想像させるだ液まみれのゴールデンボールを今度は素手で触れってか、ネイピアの鬼!悪魔!)」


「ラジアナ?

今何か言った?」


「いいや。

回転って普通に こ、こう でいいの?」


「当たり前でしょ!

どう?

どんな風に回転させても前と同じよね?

そのゴールデンボールをこの鏡で丁度半分になる位置(鏡の端あたり)において見て!」


「あ、おんなじだ!」


「そう!

鏡に映っているボールの半分は、実際のボールの半分(鏡で隠れてしまっている部分)と全く同じよね?

つまり、球対称ってのはね、あらゆる点対称操作を行った時に前の状態と重なる対称性ってことよ」


『シューン!!』

「危ない、背中よ、クオリア!!」


「あ、ありがとう……ネイピア」


「どうやら、お喋りしている場合では無さそうね」


『ドーン!』


「アイリス、随分激しく尻もちついたみたいだけど大丈夫?」


「私は平気。心配してくれてありがとう、

ラジアナ」




「やっぱり……、

みんなで一斉にかかっても歯が立たないわ。


単体攻撃のはずが、全員に結晶の触手が襲い掛かる。

つまり、超高速でターゲットを切り替えているんだわ」



「理屈はわかっても速すぎてこれじゃ防ぎきれない!」

クオリアはシメントリアの攻撃のスピードに追い付けず、徐々に追い詰められていった。



「みんな、少し待ってて」


そう言ってネイピアはタロットカードを取り出すと目を瞑り神経を集中させて占いはじめた。


占いの間、ネイピアを取り囲む様に、沢山の数式や図形が書かれた球状の帯が現れては、表示が刻々と変化している。



「解かったわ!」

そう言ってネイピアが目を見開くと、占いの間彼女を包んでいた帯も消えていた。



「みんなお待たせ!

シンメトリアの唯一の弱点は低次元よ。

彼女はここ19万6883次元より低い次元では存在出来ないの!


そこで、問題の作戦なんだけど、

ラジアナ! あなた今ペットのファンシーを召喚できる?」



「召喚はしたことない」



「クオリア? あなた召喚得意よね?

ラジアナのファンシーを召喚してあげて」



「ああ、わかった。

我こそは偉大なる召喚支配のクオリア! 

ラジアナの飼い犬 ファンシーよ!

今こそ飼い主の元へ現れたまえー!!」


クオリアがそのように唱えると、

ラジアナの胸元に小さなブラックホールが出現し、

小さくて可愛い子犬が目の前に現れた。


『クイン、クイン』


「よしよし、ファンシー寂しかった?

度々留守にしてごめんね~」



「ラジアナ? 飼い犬との触れ合いは後にして

ファンシーを変身(※)させて!」



「え? アタシ、ファンシーを戦わせたくない!!!」


「大丈夫だから早く!!」


「わかったよ~!


ファンシー?

い~い? 変身よ!

お手!」


「クイン!」


「お座り!」


「クインクイン!」


「お回り!」


「クインクインクイン!」


「ちんちん!」


「クインクインクインクイン!」


「ステラシアン!」」


「クインクインクインクインクインクインクインクインクインクイン

クインクインクインクインクインクインクインクインクインクインク

インクインクインクインクインクインクインクインクインクイン!~」


すると、ラジアナのペットファンシーは連続で絶え間なく吠え続けながら、

やがて不思議なオーラを纏った巨大な狼へと変身していった。




「それが、あなたのペットの5次元獣の姿、

5次元獣ステラシアンなのね」


「そうよ。

それで?

この子をこれからどう使うという訳?」


「あの技を使うのよ!」


「あの技って!

ネイピア、あんた結局ファンシー戦わせるつもりじゃん!!」


「確かにそうね。

でも、もし相手の攻撃が全く当たらなくて、

あなたやステラシアンちゃんが全く攻撃しなかったら

それは果たして戦っているって言うのかしら……?」


「ネイピア、あんたね~、全く。

わかったわよ! 


ファンシーお座り!」



「クインクイン!」

すると、ラジアナはステラシアンの背中にまたがった。


行っくよー! ファンシー!! あの技よ!!]


「クインクインクインクインクインクインクインクインクインクイン

クインクインクインクインクインクインクインクインクインクインク

インクインクインクインクインクインクインクインクインクイン!~」


すると、ラジアナを乗せたステラシアンは物凄いスピードで真智達外野席を含めたメンバー全員をすっぽり覆うくらいの球の軌跡を作りながら走り出した。


そして、ラジアナはステラシアンの背中に乗ったまま神ウニを使っている!



「何じゃありゃー!!」

真智は驚きのあまり、面白いわけでもないのについツッコミを入れてしまった。



「これって……もしかして?」



「そう。アイリス、あなたが思っているとおりよ」


——————————————————————

【登場人物】

真智まち

•アイリス(愛理栖)

•ネイピア

•クオリア

•ラジアナ

•ステラシアン(ファンシー)

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