助っ人2
四葉が突然意識を失った。
そしてそれとちょうど入れ替わるように、
四葉の中から知的で落ち着いた少女が姿を現したのだ。
「四葉ちゃん!
ねえしっかりして!?」
「その女なら心配ないわ。
今少し眠っているだけだから」
「え?
あなた……誰?」
「私?
私は 次元の魔女 呪いと完析のネイピア。
そこのさっき戦ってた二人の女と同じ5
「5
ネイピアと、それにアタシも!」
「谷先生?」
「すんません、アタシも今眠って頂いてるこのオバサンの中に潜伏してました。
アタシは円周率πを司る5次元少女ラジアナって言います。
以後おみしりおきを~!」
彼女の姿はとても幼く、小学生くらいの幼女にしか見えなかった。
「あ、あれ……?
ねえ、あんた!」
「え、誰のこと?」
「そこの、確かアイリスとか言ったっけ?」
「私ですか?」
「そうそう。
さっきからずっと気になってて、聞こう聞こうって思ってたんだけんどさ、あんた……もしかしてチルダ?」
「えー? どうして?
どうして私が過去に呼ばれてた名前を知ってるんですか?」
愛理栖は驚きのあまり、ラジアナさんの胸ぐらを
掴み激しく揺さぶっていた。
「私よ! 私! クオーリア!」
「ク、ク、クオーリア先輩!?」
「久しぶり、チルダ!
元気だった?」
「元気でしたよ~!
まさか先輩ともう一度会えるなんて、
私、私……思っても見なかったですよ~」
「泣かないでよ~! チルダ~!」
「ねえ? そこの二人。今の緊迫した状態がわからないの?
馴れ合いも程々にしてちょうだい!」
「ご、ごめんなさい」
「チルダ……じゃ無かった。
愛理栖? ネイピアはいつも毒舌でこんな調子やから、
あんま気にしなさんな」
「誰が毒舌ですって~?」
「ご、ごめんなさい……」
「ぺちゃπ! 早く作戦実行するわよ!」
「アタシ、そんな名前の人知らない!!
そんな名前の人知らない!!
って、誰がぺちゃπじゃコラー!!
無視すんなコラー!!」
「アハハ。
なんか、あの二人仲がいいですね~♪」
「ねえ、愛理栖はネイピアさんと初めて会うの?」
「そうだよ。いつか真智にも話した事があるけど、
私はクオリアしか知らなかった」
「へえ、そうなんだ」
「ねえ、アイリス? クオリア?
あなた達も作戦手伝って貰うわよ!」
「は、はい!」
「わかった!」
「私行ってくるから、真智は安全な場所で離れてみていてね!」
「うん!」
「すぅ~、はぁぁぁぁ」
「ちょっとラジアナ?
あなたいったいそこで何をやってんの?」
「すぅ~、ちょっと今話し掛けないで!」
ラジアナはネイピアにそう言いながら、
全身の力を抜き目を瞑り深くゆったりと腹式呼吸をしていた。
そして、両手を外側に広げ、まるでコンパスの針のようにゆっくりと円を描くように回しはじめた。
「何? あれ? ラジアナさんの技かな?」
『バン! グサッ! ドーン!ボーン!』
「ラジアナさん大丈夫……ですか?」
真智はそんなラジアナを心配せずにはいられなかった。
また、そう思うのは愛理栖も一緒だった。
「ラジアナさん?
さっきからシンメトリアに何度も一方的に攻撃受け続けてて、
顔とか原形をとどめないくらいボコられて不細工になっていますが、大丈夫……ですか?」
ラジアナはそれでも自らの行動を止めようとはしない。
例えは古いがどこぞの国民的格闘ゲームのアニメで
空手大好きな主人公の男が出すやたら準備に時間がかかる必殺技のように
両手に何かを溜めているようだ。
すると突然、ラジアナは急に手を止め目を見開いた。
そして両手の手首を重ね何か見えない力を前に一気に押し出すように解き放った。
「おりゃゃゃ!正弦波~!! 」
「わ~!! なんか凄いの出た!
……あれ?」
真智は一瞬反射的に目を瞑ったが結局、
何も起こらなかった。
「ちょっと! ラジアナ! あんたはいったい何がしたいの……?」
とネイピアさん。
問題のラジアナはと言うと、
その無駄に準備に時間をかけた波動の構えから、
まるで空を飛ぶ蝶々のごとくくねくねと立ち回り、
手首を重ねた手のひらを閉じたり開いたりパクパク動かしながら
シンメトリアの胸元目掛けてゆっくりと進んでいく。
「はぁ…………」
みんな呆れ果てて突っ込みを入れる気さえないようだ。
「あそこまでもったいつけておいて、
結局 『物理』かよ~!」
真智はツッコミの先陣をきった。
「そりゃ正弦波 だとタイトル詐欺っしょ?」
「あ~、みんなうっさいよ~! 物理最強~!」
と言いながら、ラジアナはシメントリアの胸元にスローモーションで突っ込んだ。
『ポン!』
「うっしゃー!!」
とガッツポーズをするラジアナさん。
ラジアナ
「……」
シメントリア
『……』
「あ、あれ?
おっかしー……な?
アハハ、ハ~ハ。
あっ、そうだ!
アタシ早く帰って
明日の宿題やらないといけなかったんだ。
じゃあ、悪いけど、アタシ先に帰る……ね。
あ、それと1つ言い忘れてたけどさ、
今回、なかなかいい最終回だったよ」
『ブチッ』
「あれ?
おかしいなぁ。
今何かこう近くで、眉間やこめかみ辺りの血管が切れたような意味ありげな音したけど……。
ま、気のせいかな。
じゃあみんな、後よろしくね~」
ラジアナはなるべく目立たないように
さりげなくその場を立ち去……。
「ラジアナ? 」
「え?何?ネイピア……」
『ツンツン』
「え、アタシに何用でごじゃりまする?」
ラジアナがまるでブリキのロボットのようにぎこちなく後ろを振り返ると……。
「ふぅー。
なんだぁ〜、ただのシメントリアじゃん♪
全く〜、心配させてくれちゃってぇ♪
そんな悪い子にはデコピンじゃー!
『ズビシッ!』・・・って、オイっ!!!」
『ジィィィィ』
「ゲェ?
な、な、な、
ニャハハ、ハハハ。
ねえ?
あだぢ、パンツはき替えに、
マジでもう帰っても……いいかなー!?」
『プルプルプルプル』
シメントリアは首をゆっくりと二回横にふる。
「帰っちゃ駄目?
いいでしょ? ねぇ~え。 お願~い、うっふ~ん」
切羽つまって女性相手に色仕掛けをするラジアナさん、
あいつなんてバカなんだろうと真智は大声で笑いたい感情を必死で圧し殺し心の内であざ笑う。
『ブンブン、ブンブン』
シメントリアは首を横に素早く四回
ふった。
ラジアナ
「帰っちゃ駄目じゃない、つまりいいんだ。
わかった。
じゃあアタシ帰るね。
バイバ~イ!」
『キキー!』
シメントリアの目が光って……。
『ビューン!』
物凄いスピードの何かが
ラジアナの右頬をかすめた。
それは先の尖った結晶の先端のようだった。
ラジアナの背後の網構造のエリアのある場所からは
しばらくの間、火花と真っ黒い炎が立ち上ぼっていた。
穴は遥か彼方の無限遠点まで
繋がっているようだった。
シメントリアは恐ろしい目付きでラジアナを睨むんでいる。
「もしかして……キミ、
今物凄くアタシを恨んで怒ってたりとかす、いいえ
しますか?」
『プンプン』
シメントリアは首を二回はっきりと縦にふった。
「ごめんって。
アタシは決して、
どさくさに紛れてしれっと立ち去って、
あなたを出し抜こうとか
そんな事考えてないんだから~
……ね?
へ? ちょっと! あれ?
こんなか弱いレディーの
アタシに何をしようとなさる気……ですか?
まさか、冗談だよね? アタシをびっくりさせてみたかっただけでしょ?』
『ドスー!!』
シメントリアの結晶の先端が情け容赦無く伸び、
ラジアナさんを空高く突き飛ばした。
「悔し~! 覚えてらっしゃい!
あ~れ~! わいπき~ん!」
ラジアナはシンメトリアに遥か彼方まで弾き飛ばされた。
『よ~飛んだな~!』
『そやな~、派手にとんだな~!』
『見事な流線形の反復カーブですね~』
いつの間にか、眠らされていた谷先生達は起きていたらしい。
『ふがふが!
あの軌道を正弦波と言うのか!
ふが~ん成る程!
ラジアナって奴、なかなか味なことを……』
宙は自分の顎を……ではなく、
顔の名状しがたい場所の固形物を……
指先で遊びながら、
やたらと感心していた。
宙「もごもご、むずむず、ぐりぐり?」
真智「執筆中※」
…………。
宙「ふんがぁ~、ふ・ん・が!、ふが?」
四葉「執筆中※」
…………。
宙「ふんがー!!!」
※↑
【作者視点】
どうしてこんなことになったのか、私にはわかりません。
これをあなたが読んだなら、その時、私はもう次の章に行ってここにはいないでしょう。
…第75部サブタイトル 助っ人2 をもう一度見直すか、見直さないかの違いはあるでしょうが。
これを読んだあなた。
どうか彼女に……、
内心では ぶっちゃけ誰かのツッコミを
期待してウホォウホォ言っている宙に
ツッコんであげてださい。
それだけが私の望みです。
作者
「こうして~、ラジアナさんは夜空に輝くお星さまとなり~、
今も天高くから私達を見守っているのです~。
めでたしめでたし~」
「最終回~乙」
「こらこらこら、そこー! !
アタシの人生、勝手に終わらしてんじゃねー!」
——————————————————————
【登場人物】
•
•ネイピア
•ラジアナ(クオーリア)
•アイリス(愛理栖 / チルダ)
•シメントリア
•谷先生
•
•四葉
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