第8話 文化祭
海が丘学院では毎年十一月に文化祭を中高合同でやっている。
もう十月になってた。
編入した二年三組では、ファッションショーをすることになってて、わたしはモデルをやることになった。
いま着ているのはは襟にフリルのついた白と藤色の矢すがりという模様の着物に、赤みがかった茶色の袴に黒のブーツ……まるで大学の卒業式のような服装だ。
「夏海ちゃん、似合う!」
「テーマが近代だけあって、服がだいたい着物。洋服でもものすごくクラシカルだからね」
もう一着着ることになっている服を試着させてもらった。
真っ白なドレスで、とてもきれいなものだ。
「鹿鳴館で女性が着ていたドレス、バッスルスタイルっていうんだ」
「こっちも、サイズとかは大丈夫そうだね。OKだよ」
「詩音ちゃん、めちゃくちゃはりきってるね。この前の部活帰りとは大違い」
「え~!? ひどいな~」
わたしはすぐにドレスを着ているときに、ベールまで被せられちゃったしさ……。まるでウェディングドレスを着た新婦じゃん。
わたしのスマホで詩音ちゃんに写真を撮ってもらった。
「きれい! 夏海ちゃん、これさ。瑠果に送ってもいい?」
寮に帰ってから、詩音ちゃんが話した。
「え~……めちゃくちゃ恥ずかしい」
「いいじゃん! 向こうにも文化祭の写真、送ってもらえばいいじゃん」
詩音ちゃんがLINEで瑠果くんに写真を送られた。
「し、詩音ちゃん!! 送っちゃった!? もう~、やめてよ」
詩音ちゃんは爆笑してるし、わたしは心臓がバクバクいってて落ち着かない。
そのとき、メッセージが来た。
――Lucaと書かれてある、瑠果くんからだし。
わたしはそのままメッセージを呼んだ途端、ベッドでじたばたする。
『かわいい……めちゃくちゃ。俺もこんなのしかないけど、送っとく』
瑠果くんから送られたのは、黒のタキシードに身を包んで、髪をオールバックにした瑠果くんが写っていた。
「かっこいい!」
「わぁ……めちゃくちゃ、決めてるな! 瑠果」
詩音ちゃんは少し、呆れてる。
文化祭まで、あと二週間。
体育館でファッションショーをすることになってて、わたしはリハーサルでの動きを確かめて、同時にクラスのみんなも移動するときの注意事項とかを確認している。
あれから、瑠果くんからのメッセージが来てない。
向こうも、テスト勉強をしているのかもしれない。
ちょっとだけ、寂しかったけど、冬休みにおばあちゃん家に遊びに行こう。
文化祭当日、わたしは二着の衣装を着てファッションショーに出た。
とても緊張したけど、とても素敵で楽しかったの。
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