下請けの英雄譚

@Domudomuman

第1話

「ヒーローって職種としてどうなんだ?」

今の自分について考える時にいつも一番に出てくる疑問がそれだ。

新参のヒーロー団体「Order Man」を立ち上げたのがもう6年も前になる。

森林業に一生を捧げると思っていた、二十歳になりたての頃の自分にどう説明したものだろうか。

「谷川君のような人材を自分達は必要としているんだ、一緒にこの星を守ってみないか?」

そう話したのはやたらと目がギラギラした50代の男性だった。元々流されやすい性格と植物に影響を与えるという理解され難い自分のスキルを認めてくれた事、口頭で示してきた収入額も経験のない若造を揺さぶるには充分だったのだ。

思えばヒーロー団体が増え出した頃だった。

警備会社や警察などの、予防や事が起こってから動くというよりも、もっと、シンプルでわかりやすい勧善懲悪をみんなが求め始めたのだ。

何を悪としたものか、最初は苦労しなかった。反社会勢力というものは探せばいるもので、自分達が思いもよらない悪い奴とは案外身近に居るものだと思い知った。

その中で俺が居たのは、よくいる5人1組のユニットだった、名前は思い出したくもないが、テーマは健康とかオーラとか、いかにも流行りに乗ってみたという感じだった。

緑色のぴっちりしたスーツを支給され、引き立て役のようなポジションだと思ったものだが、それ以外不満はなかったから最初は楽しかったものだ。

この世に変化しないものなど無いのに、永遠に変わらない平和を作り出せると夢想していたのだ。


チームは一年持たなかった


ボスと博士がピンクポジションの女に骨抜きにされていたのだ、あの女のせいで最早ヒーローチームと呼べる大義も秩序もなかった。

次々と気に入らないとされたメンバーは居なくなり、俺も例外ではなかった。


ある時などテロリストのアジトに突入する作戦で、実行するのが理由もなく俺1人と言う事すらあった


ハラスメントを煮詰めたような環境だが職種柄どこにも相談出来ず俺の胃袋はさながら草一本無い荒野のように荒れた。


グリーンだったのに


それでもなんとか一年が経とうとする頃、あの事件は起こったのだ。







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