『触らぬ甘味に祟りなし』

やましん(テンパー)

『触らぬ甘味に祟りなし』


 ぼくは、糖尿病である。


 したがって、カロリーの高い食べ物はご法度である。


 あま~~い、お菓子など、宿敵である。


 父親も糖尿病で体を壊したから、親の仇でもある。


 しかし、そうしたものは、圧倒的に美味しい!


 テレビのグルメ番組などは、見るだけで体に良くなさそうだが、ついつい見たくなる。


 まあ、見るだけならば、許そう。


 しかし、ほっておくと、スーパーやデパートで、なぜか、勝手に手が出てしまう。


 そこで、ぼくが発明したのが、この『触らぬ甘味に祟りなし』である。


 これは、目の前の食品を自動で走査し、一定以上のカロリーとか、糖分とか、身体によくない成分とかを含むものは、手に触れさせないという画期的な機械である。


 そうしたものに触れると、身体に一瞬、高い電圧がかかり、びりっとくるのである。(ま、そういう気がするだけである。実際には、そういうことはない。つまり、脳に幻想の刺激を与えるだけなのである。)


 ぼくは、とりあえず、自分を実験台にして、実証試験を行った。


 装置は、腕時計型である。


 きわめて、普通の見た目である。


 実際、時計の役目も果たす。


 効果は、上々である・・・・・と、思った。


 最初は。


 しかし、その結果は、みじめなものだったのだ。


 まず、装置の設計に、どこか無理があったのか、腕から外すことが出来なくなった。


 どうやら、細胞に食い込んで、身体と一体化したらしい。


 しかも、なぜか、ほとんどの食品で、警告反応が起こる。


 おかしい。


 買う事も出来ないが、食べる事も出来ない。


 水道水もだめで、ごく一部の市販の飲料しか飲めない。


 やがて、脳が怖がって、どうにも、いうこと聞かなくなってきたのである。


 つまり、食事をまったく受け入れない、異常な状態になってしまった。


 ぼくは、入院となり、生死の境を彷徨うことと、なったのである。


 病院でも、うまく装置を取り外すことは、どうしても出来ず、ついに、しかたがないので、腕を切断することになった。


 それで、なんとか命が助かったのであった。


 

 装置そのものに、問題があったのだとは思うが、もしかしたら、この世の食べ物自体に、思わぬ問題があったと、考えられなくもないのだが・・・・・・・



 ぼくは、それ以来、アナログに生きている。


 機械に頼るのは、やめにしたのであった。

 

 

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『触らぬ甘味に祟りなし』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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