第10話

 ペイジは体をひねって服を確かめている。

「似合ってますよ、その服」

「うむ。胸が苦しいが」

 嘘つけ。

「見栄はっちゃって。ぺたたのくせに」

 ユリンはまだ懲りていない。

「そっちこそ、下着をつける必要がないからつけてなかったのではないか? AAAカップでもあまるだろ」

「ぬをー!」

 ああ、ふたりとも不毛な争いを。底辺同士、よろしくない展開。

「ユリン落ち着け。今日は一旦帰ろう。な?」

 爆裂魔法。

 ブレイクはサッカーをかばって飛びつき、防御魔法で防御壁を展開した。

 閃光。爆音と爆風。

 あたりは煙が充満し、石の破片が降り注ぎ転がる。

 天井から太陽の光が差し込み、煙に反射してカーテンをつくっている。

 爆発で天井が抜けてしまった。

 加減というものを知らないのか。ユリンのやつ。

「げほっげほっ」

 ブレイクもサッカーも煙を吸い込んでむせる。

 ペイジはどうしただろう。まさか、死んでないよな。

 機械の動作音が聞こえてきた。今度はなんだ?

 風が起きて煙が流される。冷たい風。クーラーがついていたのか。天井が抜けて室温があがったから作動したのだ。ちょっと間抜け。

 そういえば、ペイジはすぐに扉を閉めた。エネルギーがもったいないからな。よい心掛け。

「よくも私の家をぶっ壊してくれやがったね。お前らまとめて吹っ飛ばしてやる」

 姿は見えないけど、ペイジの中性的な声。今となっては、幼女が低い声を出しているようにしか聴こえない。

 攻撃がくる。もう一度防御魔法を、心の中で準備して身構える。ひどいとばっちりだ。人生、ツイてない。

 世界魔法。

 またブレイクの知らない魔法だった。なにが起こる?

 周囲をただよう煙に目を凝らす。

 視界が暗くなって。

 真っ暗だ。

 すっと足元が浮いた気がした。逆だった。床がなくなり、落ちてゆく。

 どこまで落ちても下につかない。

 これも魔法なのか。

 真っ暗な中で、あがっているのかさがっているのかもわからなくなった。

 ユリンとサッカーはどうしただろう。

 ざわざわと騒がしくなってきた。

 これは人の声?

 足音?

 足に地面を感じた。

 騒がしいのはかわらない。

 暗い。けれど真っ暗ではない。光がある。照明だ。人の姿が見える。

 ユリンとサッカーだ。

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