2章 幼馴染メイド、デレへの序章
第45話 デートってなにか教えてくれ
「なぁ、
「どうした、
「学校帰りにどこか寄るってどういうことだと思う?」
「そりゃ、寄り道だろ」
「だよなぁ」
男子生徒二人が一所懸命走っている姿を見ながら春に問う。今は体育の時間で何故か短距離走をやらされていた。僕と春の出番はまだで二人で座りながら話していた。
そこで、僕はリア充である春にデートについて教えてもらいたいと思った。
僕と腐れ縁の関係にある幼馴染の
高校三年生の男女が二人。学校帰りに寄り道……それは、デートと呼ぶに近しいものだと思っていた。けど、寄り道する前、幸奈から言われたのだ。デートじゃなくて寄り道だから勘違いするなと。
僕だって一瞬勘違いしかけた頭を叩いてはっきりと理解した。自分の中でこれは寄り道なのだと。
でも、終わる時……本当にもう終わりだという時に幸奈はこの寄り道をデートだと称したのだ。自分であれだけ寄り道だと言っておきながら。
僕は分からなくなった。これは、いったいなんだったのか? デートなのか? それとも、ただの寄り道なのか?
その日の内に訪れたメイド喫茶『ぽぷらん』でも、幸奈はその事について一言も触れてこなかった。ただ、僕がいる間、妙にそわそわしているように感じて僕も変に意識してしまった。
結局、デートなのか寄り道なのか分からなかったせいで寝不足だ。今朝も幸奈に変わった様子はなかったし……くそ、一人で悶々としていても解決しない! だから、春。教えてくれ。リア充として!
「じゃあさ、高校生とか大学生の男子と女子が二人で出かけるパターン……それって、なんて言うんだと思う?」
「そりゃ、デートだろ」
「デート……そうだよなぁ……。やっぱり、デートだよなぁ……」
世間ではそれをデートと呼ぶらしい。でも、だからってあれだけ寄り道だって言い張ってた幸奈が急にデートだと言い出す意味はあるんだろうか?
初めて誰かと寄り道して楽しいって言ってたし気分が高まって口を滑らしただけなのか……。
……うん、多分そうだな。
そうだと思う。てか、そう考えると段々そうだとしか思えなくなってきた。世間ではデートって呼ぶかもしれないけど、僕と幸奈は恋人とかじゃないんだ。誤解されるのは嫌だけど僕の中でだけはっきりとさせておけばいいや。
「祐介、誰かとデートするのか?」
「は? なんで!?」
「いや、質問してるじゃん。って、ことは二人でどっか出かけるんだろ?」
悪いな……もう終わった後なんだ。
それを言えば、からかわれそうだから言わないけど。
「相手は……まぁ、幸奈ちゃんしかいないか」
「なんで、そこで幸奈が出てくるんだよ……」
まぁ、それで正解だけどさ……。
「祐介に幸奈ちゃん以外に仲良くしてる女の子なんていないだろ?」
正論過ぎて何も言い返せない……後輩の
僕がもっとブイブイ言わせるイケイケ男子なら幸奈以外の女の子の名前が出てくるんだろうけど……そんなこともないし。
「で、どこに行くんだ? 映画でも観に行くのか?」
「行かねーよ……」
「なんでだよ。行ったらいいじゃん。恋愛映画ならいい感じの雰囲気になったら自然と手を繋ぐことが出来るんだぞ?」
「繋ぎたいとか思ってない。てか、春はいっつもそんなことしてんのか?」
「いっつもじゃないけど映画デートならまぁしてるな」
「……なぁ、デートってなんなんだ?」
幸奈からは無理やり、欲しくもない幸奈と出かけることが出来る権利とやらをプレゼントされてる。どこにも行くつもりなんてないけど……万が一、行かなきゃならなくなった時のために参考にまで聞いておこう。
「そりゃ、さっきも行ったけど二人で出かけることじゃないか? ま、好きって気持ちがあるかないかは別としても、それなりの年頃でならデートって呼ぶだろ?」
「分からんこともないけど分からん。因みに、デートってなにするんだ?」
「一緒に楽しいって思えることをすればいいんだよ。なにが楽しいって思うかはカップルによって違うから正解なんてないと思うぞ?」
幸奈が相手だしどっか美味いもんでも食べに行けばいいか……って、いかんいかん。考えるなよ。
「ま、幸奈ちゃんを楽しませてあげられるように頑張れ!」
「だから、違うって言ってるだろ……」
「ははは。じゃ、俺呼ばれたから行くわ」
春は軽く片手を挙げてスタート位置まで行った。
結局、あれがデートかどうなのか分からなかった。春と世間ではデート。幸奈もデート。僕もデートだって思った。てことは、デートだったって思っていいんだろうか?
いっか。思うだけならなんの罪にもならないはずだし。
それより、あれが人生で初めてのデートだって思うと改めてドキドキしてきた。今度から幸奈と関わる時、いつも通りに出来るかな……。
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