後編 其の五



―8月2日(月) 朝―


―千代田区 プルス・アウルトラ本部 作戦室―



ドミニク「失敗ッ?! ですってッ!?」


その怒鳴り声と、思い切り机を叩くのは同時だった。


副長「はい…報告が入っております 昨夜、黒い男と接触した"パペッター"からは… どうやら、彼女の事も知っていた様で…」


ドミニク「何ですってェ…?!」


その事に眉を吊り上げる。


ドミニク「もうそこまで調べ上げてッ…!?」


副長「彼女は…どういった経緯で…?」


ドミニク「何も問題は在りません! 在るワケ無いでしょッ?!」


副長「…いえ」


突然の剣幕に、次の言葉を失う。


ドミニク「兎も角! "パペッター"を呼びなさい! そして、秋川で回収したアレを持ってきなさい!」


副長「!? アレを?! そんな事はッ…!」


余りの申し出にたじろぐ。


ドミニク「黙りなさい! 必要です! アレはあの者(黒い男)の欠点(ウィークポイント)足り得るモノですッ! 持ってきなさいッ!!」


副長「それは…ッ 人の行いを…越える…ッ!」


躊躇(ためら)いを隠せずに言ってしまう。


ドミニク「Festinare(早くツ)!」


その剣幕に勝てる者はいなかった。



―8月2日(月) 昼―


―千代田区 プルス・アウルトラ本部 会議室―



女「…」


本部である作戦室より二回り小さい会議室へ現れた女は、昨晩と同じ格好で物静かに現れた。


ドミニク「現れましたか…"パペッター" アナタにはコレを使って黒い男を拿捕してもらいます」


そう言って、机の上の布に巻かれたナニカを見せる。


ドミニク「ソレを完成させまではこの施設を使って構いません」


女「…」


無言で頷くと、それを手に取り、足早にその場を去った。


副長「…彼女は…サポート要員では? 経歴では糸使いの諜報要因だとありますが…? 何故、アレを渡すなどと…」


訝しみつつ聞く。


ドミニク「…えェ、そうですよ…彼女が打って付けです アレを囮に罠を仕掛けるんです 必ず捕まりますから」


少しの間の後、歪んだ笑顔で答える。


それは、この場に二人きりでいる副長をも不安にさせた。

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