第二十話

四十七



―6月1日(金)夜0時37分―


―町田市 南 廃工場 裏 異界―



白の男「ぃよぉーし! それで行くぜぇー!」


と言って降魔杵ごうましょうを奪い、マーラに再三立ち向かう。


黒い男「え!? あ!ヲイ…!」


白の男「コレならイケるぜぇ…!」


制止を聞かず、そう言いながら走り出す。


狙いはさっき刺した部分…!


マーラ『おのれ…! ヒトの子よ…! 賢しい事を!』


白の男に敵意を向け、触手で、向かってくる白の男に襲いかかる。


白の男「はっ! ノロいぜぇーっ!」


先程の降魔杵が効いているのか、動きが単調だった。


上から来る攻撃を左右に避けつつ先程の刺された脇腹(?)に向かう。


よく視ると、その部分は泡立ち、焼ける様な状態になっている。


白の男「コレで…! THE☆エンド…! だぜ…!」


途轍とてつもなく余裕な、普段は言わない様な言い方だった。


白の男「おぉりゃぁぁあああぁぁぁぁーーーー!!!」


大仰おおぎょうな言い回しで、その同じ部分に降魔杵を刺し込んだ。


マーラ『ぬゥああぁぁぁ! さかしい真似を!』


不定型な形状の全身を動かし、白の男を触手で弾き飛ばす。


白の男「ぬおッ!?」


先刻よりも強い力で弾き飛ばされる。


それと交差する様に黒い男が瞬速で前に出る。


その足は向かっていた。


そして左手を逆手にして降魔杵を掴む。


マーラ『おのぉぉぉれ!』


苦痛にありながらも再度同じ場所を攻めようという行為を浅ましく思ったのか、怒りを込めて触手を黒い男に振るった。


黒い男「ふッ!」


思い切り降魔杵を引き抜き、瞬速で離れる。


マーラ『ゴォォォアァァァァァ!!』


苦しみ悶えながら触手をばたつかせる。


閉まっていた独鈷杵どっこしょを、右手でサイドバッグから取り出し、


黒い男「ナウマク・サマンダ・遍く金剛尊にバサラダン・カン帰命致す!」


不動明王の小咒しょうじゅを唱える。


すると、右手の独鈷杵の先端が変化し、刃渡りの長い、りの無い直刀の独鈷剣どっこけんへと変化した。


黒い男「…」


静かに深く息を吸い、構え始める。


左手の降魔杵を逆手さかてで顔の近くまで引き、右手の独鈷剣を後ろ手に。


腰を低く落とし、左足を前に、右足を後ろの位置に。


頭を落とし肘が進行方向の正面に持ってくる。


そして、右手に"力"を込めると、独鈷剣共々金色こんじきに輝き始める。


マーラの近くでは、炎が燃え上がり、未だ爆発も起こっていた。


速く決着を付けないと危険である事が解る。


前傾になり、爪先に体重を乗せる。


そして…


黒い男「… ふッ!」


そして、勢いを付け、爪先で地面を蹴り、瞬速でマーラに向かった。


マーラ『おのれ!ヒトの子よ! このマーラを斃そうなどと…!』


そう言い、触手を向かってくる黒い男に向ける。


が、余りの速さに攻撃が当たらない、


マーラ『おのれェェェ!!』


思い通りにらない事に怒りを覚えるも、その怒りは意味を為さなかった。


その攻撃は、一度も当たらなかったのだから。


黒い男はその間に、もうマーラの目前だった。


左手に持った降魔杵を、腹部の前面に突き刺す。


マーラ『ギィィィアアアァァァァァ!!』


苦痛に全身を悶えさせ、再び触手をバタつかす。


刺した部分からは大量の白い液体がどこからか現れ、れ出す。


黒い男「フンッ!」


そのまま左手の降魔杵を握ったまま真上に跳躍し、腹部を斬りく。


マーラ『ゲェェアアァァァ!!!』


苦痛にもだえている陰茎状の下に在る、口の上の部分まで来たら一度引き抜き、一回転して体勢を立て直したら、額(らしき場所)に思い切り降魔杵を突き刺し、手放した。


マーラ『やァめェろォォォォ!!』


その言葉も受け付けず、手放した降魔杵は、たちまち重くなり、その重さで魔を押さえ付け始めた。


中空で、右手の手首を返し、持っていた独鈷剣の刃を、斬る方向に向ける。


黒い男「ッ…! ぇやッ!」


そして左から右への横薙ぎで、その顔(らしき場所)を斬り割くと、左右の斬り下ろしを二連続、更に横に大きく回転して一閃を喰らわす。


マーラ『ギィィィヤァァァァァァァ!!!!』


苦しむマーラを無視し、そのまま縦に一回転して、地面まで一気に独鈷剣を斬り降ろした。


落下の威力と不動明王の理力も相俟って、マーラは真っ二つに斬り割かれる。


マーラ『そォォォォ…!? そォォォんんンなァァァァァァ…!!!』


断末魔は疑問だった。


マーラは、上部をバラバラに、下部を降魔杵の重みで潰されつつも真っ二つに分かれながら、浄化された。


光の粒子となって。




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