第十二話

三十九



―2018年 5月31日(木)夜10時半―


―町田市 南 廃工場横 通り道―



其処は街灯一つ無く、伸びきった草木が道を上まで覆い、夜ともなると、完全な暗闇が支配していた。


錆びきった立ち入り禁止のフェンス…


その向こうに投棄された家電達…


通路に不法に放置された原チャリ…


草が生え放題で木も工場のガラスを突き破っている…


夏目前だというのに枯れ葉が積もり、草が生えた整備されてないアスファルト…


ジメジメと湿気の溜まりきった空気…


未だにこんな、二昔以上前の風景を拝めるとは…


黒い男「…こんな場所、まだ残ってるンスね…」


屈み込み、周りを見渡しながら、不快さを滲み出し言う。


白の男「在るだろ、そりゃ お前みたいに都会にいたら見ないだろうが、一歩田舎に行けば、山奥にはまだこんな風景は在る」


冷静に、言い放つ。


黒い男「…そうかもしれないスね…」


その言葉には憂いも在った。


白の男「浸ってる場合じゃねーぞ」


黒い男「…ですね」


そう言いつつ起き上がり、道の奥へと歩みを進める。


五分程歩いたか。


黒い男「…長いスね」


白の男「異常だな…」


この道はそれ程に長くない筈だ。


だが、五分歩いてこの道を出ないのは異常だ。


二人でそう言いながらも黒い男が上を向くと、夜の暗さなのに草木の隙間から覗く空は青空だった。


だが、


その上に異常なくらい速かった。


それに気付いた途端、地響きと共に進んでいた道が更に延びていく。


入ってきた入り口は遙か遠く、豆粒の様な小ささとなって離れて行った。


現実では有り得ない。


白の男「逢魔ヶ刻おうまがときか…?」


その異界堕ちが近い…が口から出る。


黒い男「近いでしょうね…でも黄昏時じゃない… 丑三つ時が近いかも」


そう、異界に堕ちるにしても、時間的には中途半端だ…答えは解らないが異常な事に変わりはない。


白の男「…どっちにせよ異界か」


黒い男「オイ…! 聞こえているか?」


異界に堕ちた事で通信がブラックアウトしたのではないかという危機感が生まれ、そうインカムに告げる。


青い男『問題無いです…! 映像、音声共に』


少しのラグも無く返答があり、問題が無い事を確認する。


黒い男「…よし そのままモニターしとけ」


青い男『了解…!』


鈴木『当然です 協会が提供した資材なのですから』


と、当然と言わんばかりのトーンで会話に割って入る。


黒い男「…ソーデスネー感謝シテイマスー」


棒読みで返答する。


今は割ってくんじゃねぇ…! 鈴木(仮)!!!


黒い男「…兎に角、先に進もう」


気を取り直してそう告げる。


白の男「そうだな」


そう言った途端、その自分達の横から小さな何かが横を通り過ぎていった様だった。


白の男「ン…? オイ…!」


黒い男「え?」


言われた先を視ると、帽子を被った妖精の様だった。


振り返った顔を見ると不細工だった。


青い男『あ! アイツですよ…! 一ヶ月前の見逃したヤツ!』


その言葉を聞いた途端、二人は走り出していた。





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