第五話

三十二



―2018年 5月30日(水)夕刻―


―都内某所―



ドアが開く音がし、階段を下りる音がする。


白の男「おー来たぜー」


その言葉と共に、白の男が入ってくる。


黒い男「来たんスね 用意は出来てます」


そう言って、中で一人で用意をしていた資料をデスクの上に拡げる。


白の男「で、今回はなんなんだ?」


言いつつデスク前のイスにどっかと座る。


黒い男「今回のは…コレです! ダダァウン♪」


そう言いながらノートPCをデスクに出す。


白の男「あー前話してたヤツの続きか 中之が羨ましがっちゃうな」


中之「そうですねぇー ぼく女好きなんでぇー」


品の無い言い回しをしながら一番奥のイスに座る。


…この人も変わったな


それが純粋な感想だった。


青い男後輩と絡む様になってこうも変わるとは…判らないものだ。


そう思う。


当の本人青い男はそれどころではない状況だが…


一ヶ月前の事件以来大分荒んでいる。


荒むと言っても、煙草や酒に走るとかではない。


非常に繊細な状態に成っていた。


面倒臭い状態ではあるが、自分も昔経験したから解る。


―これを乗り越えねばならない―


それが、自身の成長をたもす。


辛いだろうが、乗り越えて貰いたいと思う。


そう考えていた。


―だが、今回はバックアップだ。


その中途半端な状態で、大きな依頼、しかもチームプレイでミスが許されない。


そんな中、少しのミスが状況を悪くする。


それは出来ない。


今回は目的が在る。


黒い男「そう、内容としては一ヶ月前オレ達が受けた上野の件に関連がある」


白の男「おーあの芸能人のスキャンダルな 青い男コイツがミスっちゃったヤツだなー」


と、おちょくる様に言う。


青い男「…ハイ」


それを真面目に受け、歯痒そうに頷く。


中之「あーこの人、前仕事で会ってたんですよね~ 女好きそうな人でした」


白の男「お、じゃあ中之と気が合うんじゃねーか? 訪ねてきてみろよ」


これも煽る様に言う。


中之「え~? ぼく男のひとにきょうみないです」


スッパリと言う。


黒い男「ま、それは良いとして」


話が逸れ始めたので、真面目なトーンで話し始める。


黒い男「恐らく今回の対象はコイツ等だ」


そう言って資料を表示し、見せる。


黒い男「恐らくこの辺りにが在る」


白の男「ほーお~…」


黒い男「コレは、前回、一ヶ月前にオレ達が狩った上野近辺での女性誘拐事件で逃したと思われる悪魔の情報だ」


PCでその記述を表示する。


白の男「…帽子を被った醜悪な妖精…」


読み上げながら言う。


黒い男「そう、コイツは一ヶ月前の事件にもいた」


青い男「そうです しかも、他の妖怪を手助けしていた」


白の男「で、逃がしちゃったんだろ♪」


おちょくる様にイタズラ半分で言う。


青い男「ッ…」


白の男「オイオイ、そんくらいで凹むなよ こんなんじゃ悪魔の誘惑に勝てねーだろ」


注意する様に言う。


黒い男「ま…今回の依頼は、南町田のとある廃棄工場の近くの森 最近、そこで人攫いが増えているらしい しかも、色々面倒なのが、神奈川との県境であること」


話がズレ始めたので、修正しながら続けた。


白の男「誘拐が管轄を跨いでいるからか?」


黒い男「それだけじゃないです コレを見て貰えば解る」


そう言って手元のタブレットのGoogle MAPを開いてデスクに置く。


黒い男「 近くに高速の出入り口が在る為か…中之先輩の憧がね」


と、喋らないで欠伸アクビをする中之先輩に振る。


中之「えェェ~! なんでぼくなんですかァ~!」


と、照れながら言う。


白の男「おいおい中之、四十過ぎたオッサンのリアクションじゃねーぞ ま、童貞だから行ってみたいのはわかるがな」


中之「ぼく童貞じゃないですよ~!」


黒い男『イヤ、童貞だろ』


白の男『イヤ、童貞だろ』


青い男『イヤ、童貞だろ』


見事に被って言う。


中之「ちがいますよぉー! ぼく、ちゃんとお金かけて…」


黒い男「ま、逸れましたがそれは良いとして…近辺にはラブホテルや温泉宿泊施設があり、被害が増えている」


中之先輩の幼稚園児言い訳が長くなりそうなので、話を元に戻す。


黒い男「それに加え、その反対側の住宅街にも被害が出ている これは、町田、横浜両市からの依頼だ」


白の男「なるほどな」


黒い男「そして、コレをこなせばOrACleサイトに再登録出来るくらいのが出来るってコト

つまり、今回の依頼は先月からの事件に決着を付けるのと、 この二つが、やるべきこと」


そう言って、白の男に眼をやる。


黒い男「なんで…宜しくお願いしますよ」


そう、真面目に言う。


―やってくれ―


と。


白の男「おう やってやんよ」


軽く答える。


黒い男「…頼みますよ」


ものだ。



去年の様なは勘弁して欲しい…


なのだから―


―それが。


―それだけが不安だった。


黒い男「なので、今回は黒い男オレ白の男先輩がアタッカーとして出る」


白の男「了解だ」


黒い男「青い男お前は雄一の代わりにバンからの後方支援を頼む」


青い男「了解です」


黒い男「雄一は今回は参加させない でやる」


…このメンツに雄一は関わらせられない。


変な影響を受けて欲しくないからだ。


ただでさえ、今は義侠心に駆られているのだから危険だ。


それを打診した時も、


雄一『え?! でも、何かサポートでも役に立てませんか?』


と言ってきた。


気持ちは解るがそれはさせられない。


状況を説明すると、


雄一『そうですか…わかりました』


と、渋々ながら納得していた。


済まないが、向いていないのだ。


何かに巻き込まれたら、許せない。


そう思惑していると、


白の男「あー例のヤツか 一般人なら邪魔になるしな」


その先輩の一言が思考を現実に戻す。


黒い男「そして、さっきも言ったが、協会の人間がバックアップとしてオンラインでサポートをしてくれる」


白の男「お! そーなのか 遂にきたぜー!」


そう言いつつ両の拳を胸の前で握り併せる。


黒い男「言ってしまえば、やり方には口を出さないけれど、その討伐具合を視たいって事

正直言えば監視されてるって部分は在る それを踏まえての仕事だ」


白の男「オッケーだ!」


黒い男「…それと、川母利さんもサポートお願いしますよ」


中之「わかりましたー」


軽く答える。


黒い男「それじゃ、明日は夕方から出発、深夜から仕事を始める! 以上! 解散!」


そう言って、会議を終わらした。


黒い男「じゃ、晩飯はウチで食いますか 用意するんで」


白の男「お!マジか 済まねぇな じゃ、招かれてやるぜー」


中之「ありがとうございますー!」


黒い男「…川母利さんは足キレイにして下さいね…でないとマジ入れませんからね…」


青い男「イヤ…マジで勘弁して下さいよ… おれの家に前来た時最悪だったんですからね…」


二人してマジ顔で言う。


中之「そんなことないですよ~! ぼく今回はちゃんと靴下はいてきましたから!」


白の男「確認しろよ」


そう青い男に言う。


青い男「えー! もうマジヤだー!」


こんな感じで、その日は終わった。




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