第六話
三十三
―2017年7月深夜―
―目黒区 目黒川―
その水妖は目黒川を汚染していた。
そもそもその水妖は4月23日にしか現れないハズだった。
しかも、何故か日本に居る。
アルバニアに居る筈のその3mほどの多頭竜―クルセドラ―は、目黒川にいた。
目黒近辺の水質汚染が著しいとの依頼を受けた為、出張ってきたが、こちらは何とかなった。
斃した際には、その邪悪な意思を封じた水晶に変じた。
これを
こちらは何とかなった―だが…
中目黒の方は大丈夫だろうか…
一応、聖遺物は渡しておいたが…
―2017年7月深夜―
―目黒区中目黒 目黒川近く広場―
インカムからは、怒号が飛び交っていた。
白の男「オイ! なんだコイツ!? 効かねーじゃねーか! オイ!早く情報寄越せ!中之!」
その3mほどの多頭竜は白の男の使う早九字をものともしていなかった。
中之『そ…そんなこといわれても~…』
どもる中之を無視し、
青い男『渡して貰った道具使いましょう!』
そう前向きに助言をする。
白の男「あァ?! 使ってんだよ! このブサイク竜に貼り付けてんのによ!」
その多頭龍の周りを、攻撃を避けながら述べる。
さっきから、この最初に渡されたボロボロの布を貼り付けているのだが、一向に効き目はなく、合間を縫ったその行動も、多頭から放たれる火の玉や、鈎爪の大振りによって劣勢に陥っていた。
青い男「スイマセン…!」
そう謝りながら調べるも、情報が無く、打開策が見付からない。
そうこうしている間にも、その多頭龍―クルセデル―は、口から毒を垂れ流し、川を干上がらす。
白の男に狙いを付け、口から火の玉を撒き散らす。
白の男「クッセ! 危ね! あー! イラつく! 布をどーしろってんだよ!」
その火の玉を避けながらも、苛立ちがMAXに達したのか、眼に入るもの全てに罵詈雑言が飛び交う。
その時だった。
黒い男『布を自分に巻き付けて真言唱えれば良いんですよ!』
白の男「なに?!」
黒い男『コッチ終わったんで向かってます! ヤバインスか?!』
白の男「別にヤバくはねーよ! ただコイツ鬱陶しいぞ!」
黒い男『布はゲオルギウスの聖骸布ですよ! ソイツには効きます! 布を巻いて本気で真言唱えれば効きますから!』
白の男「おい!それだと時間掛かるぞ!」
黒い男『どれくらい?!』
白の男「えー…そうだな…!」
急に考え出し、間が出来る。
そんな間にも中目黒に近付く。
黒い男『もう着きます!』
その言葉と共に、上空から槍をクルセデルの頭に突き刺し、そのままの勢いで地面に叩き付ける。
突然頭上から凄まじい衝撃を受け、クルセデルは前のめりになって倒れ込む。
そのまま"閻魔"を顕現させ、左手で首を一つ斬り落とし、その斬り落とした頭を付けたままの槍を右手で抜き取り、槍を使ってアクロバットに跳躍し、クルセデルの背中から、心臓と思しき場所である部分に深々と突き刺す。
黒い男「ふッ…ぬっ!」
そしてそのまま体重を乗せ、奥深くまで突き刺し、反対側まで貫く。
バタバタと
黒い男「ふぅ…」
一息吐くと同時に、クルセデルから下り、"閻魔"で邪気を吸う。
黒い男「…どうしたンスか?」
邪気を全て吸い、跡形もなくクルセデルを吸収し、改めてその当たり前の疑問を問う。
昔ならこんな事は無かったハズなのに。
白の男「この依頼はクソだな」
黒い男「え? 何があったンスか?」
その斜め上の返答に流石に疑問が湧いたので聞く。
それと同時に、符の結界も晴れる。
白の男「討伐対象がこんななのに市の公共物に影響与えるなとか無理在んだろ 無茶苦茶だわ 狩るこっちに任せろや それ以前に費用掛かるんだからよ…! それにこっちゃあ四国から来てるんだしな…!」
黒い男「そりゃあ…解るけど…」
白の男「そもそもそれならあの二人じゃ練度低過ぎて無理だ 俺の言った事が解らないようじゃな もう一年以上こうやって毎日やってんのによ…!」
最期の一言は吐き捨てる様に言う。
黒い男「まあ…確かに…」
青い男『役に立てず…スイマセン…』
中之『スミマセン』
自分は自分なりに変化してきたが、二人の変化の無さ、成長の鈍足さはある…が、
黒い男「それだと…どうするんです?」
結論を言う。
白の男「何をだ」
苛立ちながら言う。
黒い男「今回の依頼… 公式ですよ?」
そう、これは
白の男「良いわ こんなクソみたいな状態でなんぞ 無様な戦い過ぎて自分の価値を下げる アイツ等二人も鍛え直しだ オイ! 車で近くで待ってろっつったろ」
黒い男「…」
溜息を吐きながらも、その様子を見送り、携帯で依頼主に報告を入れたあと、車に向かった。
これが、二度目のチャンス…
そして、次が三度目…
あの時は…
あの人の本音を聴けたあの時と今は―
何が違うのか…
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