第十二話

十九



―4月22日(日)早朝 夜明け目前―


―渋谷区 マンション屋上―



夜明け目前だった。


その正に太陽が開けようとしている直前、屋上の鉄柵を越えて、縁にその少女は立っていた。


少女「あんな…バケモノの子供なんて産みたくないの…!」


青い男「わかる…だから戻ってきなって…! 手術でどうにか…」


少女「もうイタイのも怖いのもイヤ! だから…」


そのニュアンスで解った。


青い男「やめろっ! なんとかするから…!」


飛び降りようとしているのが。


少女「ムリだよ…堪えられない… こんな風になりたくて芸能界入ったんじゃない…」


青い男「解る…! だから…病院に行って手術しよう…! 助かるから…!」


少女「…ムリ」


その発言を一通り聞き、顔を一瞥した。


それでのだ。


嘘だと。


青い男「そんな…! ダメだ…!」


少女「…ウソでしょ?」


一蹴する。


涙を流しながら、そう言う。


青い男「そっ…!」


その通りだった。


それよりも、その興味が在った。


少女「バイバイ」


自分を人間はという絶望を知った少女は、大粒の涙を流しながら、身を投げた。


青い男「まっ…!」


走っても到底間に合う距離ではなかった。


だが走る。


鉄柵から下を覗くと、下には血溜まりが出来始め、通勤前の人が数人集まり始めていた。


青い男「くっ…!」


後悔が自分を襲う。


何故救う方を優先しなかったのか。


だがもう遅い。


後悔は後でしても仕方が無いのだ―


そう、に教えて貰った事なのに、忘れてしまっていた。


何故か。


青い男「なんなんだよぉぉーーーーっ!!」


その後悔の念を、自分に問う様に、声を上げた。


丁度顔を出した日の出の心地良い光が、自分を照らしていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る