第十三話
二十
―4月21日(土) 深夜―
―新宿 病院内―
深夜だというのに、病院内は慌ただしかった。
五人もの性的暴行を受けた人間が現れたのだから、当然と言えば当然だった。
しかも五人もいるのだから…
医者「彼女達は全員妊娠している…その中には、十代の子が二人、他に二十代二人、三十代が一人でした」
その医者は外人であるが、非常に
二十代後半~三十代前半といった、爽やかな好青年風で、金髪藍眼の整った顔立ちだった。
だが、妊娠という言葉を聴いた瞬間、例え様のない嫌悪感が湧き上がり、その事は気に成らなくなった。
十代が二人も…
青い男「そうですか…」
黒い男「おい、クリフ!」
医者「ハイ? なんですか」
クリフと呼ばれた医者は、その名前に反応していた。
…知り合いなのか?
また知らない人か…
少し、疎外感を感じた。
黒い男「あのコ達は助かるのか?」
クリフ「なんとか…ただ、
苦エフ『まだチャンスはあるじゃないか』
…そうだ。
まだチャンスは在る。
黒い男「じゃあ、早急に頼む」
クリフ「わかりました …それでしたら、十代の子達からにしましょう 若い分、早い方が良い」
黒い男「そうだな…」
クリフ「入院の準備が必要ですから、親御さんかご家族に連絡を」
黒い男「ああ…それなら既にしていたらしい だが…
クリフ「そうですか…」
その顔は、明らかな嫌悪感と、悔やみが見られた。
黒い男「…お前は気にするな 今は医者として最善を尽くせ 本当に困ったら頼むからよ」
その肩に手を掛ける。
クリフ「…解りました 有り難う御座います」
黒い男「…で?」
クリフ「取り敢えず、必需品を持ってこなければならないので、彼女達を自宅に送らせましょう 一緒に―」
青い男「おれが行きますよ!」
いの一番で名乗り出る。
黒い男「! オマエは…!」
注意しようと言い始めた所を
青い男「良いじゃないですか…! 高校生は二人いるんだし、コッチはおれが行きますから」
クリフ「確かに…その通りかも知れません 学生ですし、こんな時間だ… 一人一人送っていたら手術のスケジュールが押しますし… どうでしょう?」
黒い男「そりゃあ…まあ…」
青い男「ですよね? じゃ、おれは親御さんが居ないって子の方に行きますから」
さっき戻る時に救急車の中で身分証から親御さんに連絡を入れていたが、繋がらないコがいた。
それを覚えている。
黒い男「あ… オイ!」
その言葉を聞く前に、既にその子の元へ向かっていた。
クリフ「元気な方ですね」
黒い男「…それだけじゃないな」
その含みのある言葉に、クリフも反応する。
クリフ「…彼、今何か悩んでます?」
黒い男「…ああ」
クリフ「だから変な
その淀みは、違和感を感じるのには十分だった。
黒い男「?… でも?」
クリフ「…いえ、また後で話します 確定していない事項を話すのはナンセンスですね」
黒い男「…ああ」
そうしてクリフは踵を返し、手術準備に向かった。
クリフ「ただ、あの人には気を掛けて下さい 特に今は」
振り返り真剣な眼差しで述べる。
黒い男「解ってるよ」
そう言って、笑顔を向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます