第十一話

十八



―4月21日(土)深夜―


―上野 走行中救急車内―



救急車は、サイレンを鳴らしながら、飛ばしていた。


指定された、新宿の病院を目指して。


青い男「…」


何も出来なかった…


あの時どうすれば良かったのか―…


今も混乱している…


スピードを出しているせいか、一際揺れ、医療機材が落ち、床にばらける。


それを救急隊員が急いで回収する。


この救急車は普通よりも大きい。


その大きい車両がこれだけのスピードを出すのだから、こんな事も起きる


…運転手は患者の事を考えているのか? こんな速さで…


車内で揺られながらも、そんな事を思考する。


青い男「…」


側で眠る高校生くらいの少女に眼をやりながら思う。


青い男「―…おれは」


―どうすれば良いのか―


救急車に揺られつつ、想う。


苦エフ『…まだ可能性は在るハズだ』


―…そう


まだ可能性は在る。


青い男「…そうだな」


少女を見遣る眼に力を込め、その可能性に、笑みがこぼれた。


青い男「まだ可能性はある…」


病院は、もう間近だった。




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