第十話

十七



―4月21日(土)深夜―


―上野 鶯谷駅北外れ 寂れたホテル―



その顔は、昔からテレビで良く観ていた顔だった。


最近はバラエティとかでみることが多くなったグループを組んでいるタレントの一人だった。


確か…"河上託也かわかみたくや"だったか…


黒い男「オイ…! オマエ…何をした? 何故狒々に憑かれた」


かがみ込み、その男―河上―の顔を覗き込みながら問う。


河上「ン…? え…? なんで…? オレぇ…? ここにィ…?え?どこォだ…?」


そう喋り出した河上の口は酒臭かった。


黒い男「ッ…!」


その口臭に苛つきを覚え、顔を逸らす。


黒い男「…話しにならねぇ…」


河上「あ~? 女の子がいたハズ…? なんだァ…オマエぇ…?」


酩酊めいていし過ぎてまともに会話出来ない。


それにコイツ…本当に芸能人か…? ガラが悪過ぎだろ…


、更に苛つきが増す。


アレだけの事をしておいて意識が無く、夢見がちに…


黒い男「…」


無言で掌打を顎に喰らわす。


ヒョッ…という息混じりの変な声と共に、気絶した。


黒い男「オイ、雄一」


起き上がりながらインカムに告げる。


雄一『ハイ?』


黒い男「ソッチどうだ?」


雄一『あぁ…ええ…今、救急車がホテル前まで来てます』


黒い男「そうか」


雄一『そっちはどうです?』


黒い男「ああ…終わった 警察も頼む」


雄一『解りました 組合の方に伝えておきます』


黒い男「スキャンダルんなるぞー…こりゃアな…」


雄一『?…どういう事です?』


倒れている女性をチラと視て、


黒い男「芸能人による淫行条例違反だ―…」


嫌悪混じりの声でそう言った。


その女達の中には、明らかに若い、学生服が混じっていた―




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