―第十二話―
―午後3時前―
―都内某所―
黒い男「―つまり、お前はあの時、意思が在って、オレの言葉を聴いていたと」
雄一「ハイ… あの白い場所での会話は全部…」
その返答に、黒い男は視線を横にやり、口元に手を持って行き、答える。
黒い男「―…でもおかしいな オレが聞いたのはベルフェゴールの言葉だったと思うぞ… 仕草や身振り、雰囲気はお前じゃなかった」
雄一「…え」
そんな事が起こるというのか。
自分とは
黒い男「つまり―…
オレ→雄一(ベルフェゴール)、
雄一→オレ、
だったと…」
お互いを両手で指差しながら説明した。
雄一「あー…まぁそうですね…でも会話はしていましたよ」
黒い男「―となると…」
一瞬、とてもマジな顔になって
黒い男「ベルフェゴールは…?」
雄一「あ、それなんですけど、最期に言って下さった言葉で、悟った…ていうか、ああ、そうだな って思ったんです」
黒い男「…つまり?」
雄一「ベルフェゴールと自分は違うなって…彼は、あの場所に、独り残りました」
最期は、少し哀しげだった。
黒い男「…そうか」
その空気を察したのか、それ以上言葉は続けなかった。
雄一「最期…言っていたんです」
黒い男「…なんて?」
雄一「聞こえなかったけど確実に―…『さようなら』って―」
黒い男「そうか」
雄一「多分…
最期の俺と別れる前のあなたとの会話は…聴いて欲しかったからだと思います…
孤独で辛かった事を」
黒い男「…だろうな」
その返答は、何より優しかった。
雄一「孤独だったから…裏切られるのが何よりも嫌だったんですね…
解ってくれる相手が欲しかった…」
黒い男「…それがお前だった」
雄一「ハイ…」
黒い男「幸いにして、お前は女に裏切られた そして、選ばないという
雄一「そう…だと思います…」
黒い男「そして、ヤツは最期の一つを待った」
雄一「最期?」
黒い男「"投げ出す"という行為」
雄一「え…」
黒い男「それをしていたら、お前は、お前自身がベルフェゴールに成っていただろうな バアルの神が、悪魔に堕ちた様に」
雄一「あ…!」
脳裏に蘇る、体験した未来の一つ―
選ばない事によって、自分が殺される世界―
思い出すだけで身震いする恐怖…
雄一「あの…! アレが…!?」
黒い男「お前のその選択で、ヤツは
解る。
それでベルフェゴールと自分が一体化…同化する事で、永遠の孤独から解放され、意識まで一体と成った、絶対の理解者を得る―
でも…
雄一「でも…それって―」
黒い男「結局堂々巡りだろうな 怠惰な者というのは、"楽をする、困難を選ばない、困難の先に在る重要な答えを視ず、目先の楽を選ぶ"からな
どっちにしろ、意識が統合されても納得がいかず、また新しい賛同者を求めるか、統合されずとも意見の反発が起きたりで、同じ結果を繰り返すと思う」
雄一「そう…ですか」
自分はそうは思わなかった。
これからの事とか…そんな事はどうでも良かったんだと思う。
ココで終わりたかったのかも。
この役目を降りたかったのかも。
それは、独りだったから。
多分、ずっと安心したかったのだろう。
不安を無くしたかったのだろう。
ずっと孤独だった
ずっと不安だった
ずっと理解してほしかった
それが理由なのだと。
それは、自分の中に
そんな決意の表情から何かを受け取ったのか、
黒い男「で?」
雄一「…は?」
黒い男「どうするんだ?」
疑問を投げかけてきた。
"何"
とは言わなかったが、理解出来た。
雄一「自分は…」
それは、自分の中で、もう決めていた事だった。
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