―第三話―

―2016年1月5日(火) 午前10時20分―


―多群邸―


雄一「ふぅ…」


そう言ってベッドから起き上がる。

あれから五日経った。

俺は選べなかった。



―2015年12月31日 午後11時58分―


―泰叡山護國院 瀧泉寺 裏 目黒不動尊 参道―


除夜の鐘が鳴り響いている。

聴こえないハズの鐘が頭の中で。

不安になり周りの情報を遮断したくなる。

うずくまり頭を抱え込む…


雄一「…ッ 出来ない…!」


絞り出した一言。


黒い男「…そうか」


それは淡々とした一言だった。だが、

その言葉の語尾には多少の失望が込められていた。


黒い男「行くぞ」


そうかたわらにいる青い男に言って、跳躍する。


青い男「…意気地が無いな」


ハッキリとした侮蔑ぶべつの言葉。それを吐き捨て、黒い男に続く。

その言葉に傷付きながらも思う。

そんな事言ったってしょうがないじゃないか

俺にはそんな責任負えないんだよ…!

心の中でごちる。

その誰にも届かない言葉も、空しく心の中で霧散する。

周りの空間にヒビが入る。

その異様な、有り得ない光景を見ているしかない自分。


黒い男「恐らくこの空間自体がベルフェゴールなんだろう!

除夜の鐘が鳴り終わる前に、この空間の邪気を解放するハズだ!

このままだと、外の世界に拡がる!

ユウイチから切り離せなかったからには、この空間自体を切り裂く!」


青い男「オレは?!」


黒い男「ここから出ろ!」


青い男「解りました!」


そう瞬時で理解し、雄一の腕をとり、弁天池へと向かう。


黒い男「…ごめんな、じーさん…」


そう呟き、左手の"閻魔"に手を掛け、力を解放する。

全身が金色に光る黒金こくきんうろこまとった龍人りゅうじんになる。

外装はコートが変化し、顔は鱗におおわれ、鋭角えいかくで外側に飛び出し、そして右手だけ"金色"になっている。

その右手に力を込め、刀を握る。

そして深く呼吸をし、瞬速でその空間全体を斬りまくる。

一瞬の出来事であり、普通の人間には到底視得みえない速さだった。

"魔人化"を解き、納刀すると同時に、世界に縦横無尽の線が入り、そこは崩壊した。

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