―第四話―

―2017年1月1日(金) 0時―


―目黒不動内 弁天池―


周囲は新年の喜びに満ちていた。

何事も知らぬ人々が嬉々としてはしゃぎあっている。


青い男「クソ…っ!」


そんな中、青い男は似つかわしくない悲痛な声を上げていた。


青い男「オイ! もっかい戻れねぇのか!」


そう矜羯羅こんがらに怒鳴りつける。だが、


矜羯羅「…無理だな 向こうに力が感じられん 恐らく、その場そのものを切り裂いたのだろう…」


青い男「チクショウ!」


そう吐き捨て、雄一を見遣みやる。


青い男「お前が選んでれば…!」


そう言って、続きを言うのを止める。

責めても意味は無いと知っているから。

だが、感情は納得がいかない。舌打ちをして、見たくもないといった風に離れていった。

それに対し、その拒絶の対応に耐えきれなくなり、逃げたくなる感情に囚われる。

だが、どうしても聞きたいことがあった。


雄一「あの…あの人はどうなったんです…?」


自分の"選ばない"という選択の結果…それを聞かないではいられなかった。


矜羯羅「判らん…」


雄一「…え?」


言い辛そうに悲痛な面持ちで答える。


矜羯羅「あの世界ごと消えたとしか…」


全身が強張る。


雄一「それ…は」


言葉に詰まる。


雄一「俺の…せい…」


苦しくて泣きそうで辛い…


雄一「なんでしょうか…?」


―自分のせいなんだ―

その確定した事実を口に出す。

涙が止まらない。

―何故だろう?―

苦しい―

そんなに親しいわけでも―

話したわけでもないのに―

人がいなくなったのが―

―悲しい―


矜羯羅「…わからん」


それは予想に反していた。

そんな曖昧な答えは要らない―

判ってるんだろう?

俺が悪いって

何故責めてくれないんだ…

いっそ責めてくれれば否定も出来るのに…

自分が否定出来ない…

自分が悪いって―

俺のせいだ―



―1月5日(火) 午前10時25分―


―多群邸―


あれから自分の周りには何も起きていない。

だが、最近、男女のいさかいやニートの犯罪、失業率が増えている。

それが、自分の選択のせいかは判らない。

だが、青い男は一人でも戦っているのだろう。


雄一「…ッ!」


がゆい。何故選ばなかったのか。

後悔…それしか見付からない。

やり直せれば…


雄一「…やりなおしたい…!」


いつの間にか、心からの言葉が口から出ていた。


??「それを待っていた」


その言葉と共に、世界は暗転した。


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