幕間―龍ノ刻― 其の伍
五
―2003年8月―
―三宅島 廃教会―
青年「もう良いんだ!一緒に帰ろう!」
崩壊するその建物の中で、彼は叫んでいた。
瓦礫の上に、
下着姿で、
恍惚とした表情で立つ女性―
その視線は上空にいる異教徒の魔物に向けられていた―
その青年は、眼が離せなかった―
その異様な光景に―
その異質な状況に―
助けた女性が、再び、危機に
それが、焦りを生んでいた。
その山羊頭の怪物は開いた翼で飛翔しつつ、耳障りで不快な、
そして、見下す様に、当たり前の様に、青年に言い放った。
…うるさい…!
心の中で山羊頭に反論した。
だが、山羊頭には眼を向けられなかった。
それはとても辛い事実だったから。
その事実を受け入れてしまっている自分が居たから。
無力だと。
自身が弱いせいだと。
だからこの事態に
これは自分のせいだ。
自分がもっと強ければこんな事態に陥ってはいなかったのだと。
彼女を助け、立ち直れる様に話をし、色々と気遣った。
彼女との交流は、自分をも変えてくれた。
彼女を救いたい。
助けたい…!
火山ガス臭がする…ここも危険だ。早く逃げないといけない。
山羊頭「勘違いしているな…」
うるさい…!
青年「いなくなったのは気にしてないから…! 早くしないと…!」
山羊頭「これは、この娘が望んだ事だ…」
…え?
山羊頭「この娘は自分で
…何?
山羊頭「この娘が望んでこの罪を呼んだのだ」
ウソだ
山羊頭「我が呼び掛けに
じゃあオレは―
山羊頭「これを望み、起こしたのは」
止めろ
山羊頭「この娘そのものなのだよ」
―何の為に?
山羊頭「貴様の行いは無駄だった」
聴きたくない
山羊頭「こうも言っていたぞ」
ああ―そうか
山羊頭「貴様が
こんなものは護れない
山羊頭「貴様は護ってはいなかった」
狩るべき存在だったんだ
山羊頭「
彼女も大罪だ 斬らないと
いつの間にか左手に現れていた"閻魔"で、その場そのものを斬り裂いていた。
山羊頭の言葉もそこで途切れた。
その場所も、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます