幕間―龍ノ刻― 其の壱


―2015年12月31日(木) 午前1時45分―


―泰叡山護國院 瀧泉寺 仁王門前―


八王子神社にて用を済ませ、遅くに辿り着いた自分が感じた事を直ぐ様口にした。


黒い男「なんだこの雑な仕事は…」


問題全てが解決していない。

項垂うなだれた。

二人とも仕事が雑過ぎる。

―確かに鬼案件だ―大行事権現は重要だ―

だからといってそれだけで良いハズがない。

―確かに独鈷杵を返してこいとは言った―重要だ―

だからといってそれだけで終わって良いハズがない。

重要だよ。

―だが、

雑過ぎる…!!!

一番重要な地蔵堂はどうした!!!

閻魔のじいさんは!!

それに邪気が残ってんだろうが!!

気付け!!!

お前等は自分の事ばっかりか!!

一人、心の中でののしる。

そして一息吐き、

…まあそこまでは汲めないor読まないか…

と、それをものの、心の中でごちた。




―12月29日(火)夕刻―


―八王子神社―


夕暮れ時、というより、陽が落ち、もう辺りは暗くなり始めていた。

護摩焚ごまだきは終わった。これで不動明王の理力は上がる。

自分の役割は終わった。

軽く会釈えしゃくをして外に出る。

さあ帰るか。

アフターファイブ感丸出しで、そう思った時だった。

そこの宮司に呼び止められた。

この人には大分世話になっている。

OrACle依頼サイト』の件でも。

要はなのだ。

肩の荷が下りた所だったのに呼び止められ、心の中で精一杯の溜息を吐きつつ、それをおくびにも出さず振り向く。

だから仕方ない。


黒い男「なんですか?」


話しを聞くと、目黒不動の利剣りけんを見てきてくれとの事だった。

…はい?

ソレ、先に言うヤツ。

後に言うヤツじゃない。

…この人は毎回こんなだ。

交渉が上手い事で。

…ホントに宮司ぐうじか?

心の中で愚痴る。

聞くと、既に根回しは目黒不動にしておいてくれたという。

老獪ろうかいですね。

まあ…今回の依頼主はこの人だから否定は出来ない。

それに―

それは、やるべき事だから。

目的が生まれた。

が。

溜息を吐いた事はもう忘れた。

その足はもう目黒不動に向いていた。




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