―第三話―



―およそ午前0時半―


―大行事権現前―


祖母を退いて、二人で本殿裏に向かった。


青い男「あーコレだコレ」


夜道で真っ暗だが、目的地に向かう。

ソレは小さな鳥居の下にあった。


雄一「あ…祠 …でも形が…」


綺麗だった。何も異常がない。


青い男「祠が戻ってる…」


雄一「戻ってるって?」


実際は『戻ってない』前の状態があるのだろうか?


青い男「あー…コレなら大丈夫だわ」


相変わらずサラッと言う。


雄一「え?じゃ、もういいの?ラケットは」


手に持ったを見せながら言う。


青い男「もういらないだろ」


サラッと。


雄一「え…そうなの」


あれだけ苦労したのに?


青い男「もう帰っても大丈夫だな」


雄一「あの…結局何が起こったの?」


サラッとした感じで終わりそうだったので、思ってい口にする。


青い男「さぁ?」


雄一「さあって…」


それは拍子抜けと言わんばかりの煮え切らない答えだ

彼も何も解らないというのか…


青い男「オレが思うのは、今回の事は結界が壊れた邪気がキミに取り憑いたせいだと思うけど…」


祠を指差しながら言う。


雄一「あ…邪気?って…」


そのファンタジーの様な疑問に思った単語を口にした


我ながら恥ずかしいと思う。


青い男「そ それを狩ってるの オレ達」


返答は何段階も先のものだった。

邪気が何かでではなく、邪気を狩るという、それありき


雄一「達…? スーパーナチュラルみたいな?」


青い男「はははー みたいなカンジかなー」


雄一「みたい…って… そんな軽く」


あっけらかんと言う。まるで真実味が無い。

だが、恐らく事実なのだ…


青い男「そーだからしょうがない あとはコレを池に返ならないから」


雄一「…池に…?その金属の棒を…?」


また理解が追い付く前に話しが先に進む。

正直ついて行けてなかった。



―午前1時―


―独鈷の滝―


男坂を下り、水かけ不動の前に来る。


青い男「わー割れてるわ コレを返して終わりーと」


そう言いつつ、水かけ不動の手に、その持ってきていた棒を置いた。


雄一「アレ?! 池が涸れてる! 涸れた事なんかないのに…」


昔からこの滝の事は知っている。

一度もこんな事は無かったのだ。


青い男「それが一つかな」


雄一「…なんの?」


とはどういう意味で言っているのか。思わず聞き


青い男「邪気が増えた理由」


雄一「え」


こんな事で? 予想外な答えだった。



―午前1時20分―


―瀧泉寺―目黒不動 入り口―


青い男「じゃ、オレもう行くわ」


そう言って、愛車らしきバイクに跨がる。


雄一「あ…うん そうか…」


なにか、残念な様な、そんな感覚が自分を覆う。

困難を共に乗り越えた…と言うほどではないが、解り

がしてしまったのか、別れを名残惜しく感じている。


青い男「じゃーな」


メットを被り、エンジンを掛け、別れの言葉を述べる


雄一「また…! 会えるかな…」


反射的に思っていた言葉を述べる。


青い男「選んでたら、いつか交わるだろ 道は」


それに対しての返答は、冷静なものだった。

だが、その言葉には、そう思わせる

それを聞くと、勇気が湧く、何時か彼と肩を並べて、

歩める―


雄一「そうか…そうだね…!」


青い男「…あの人も多分そう言うし」


最期の一言をポツリと言う。


雄一「え?」


それが気になった。

―…あの人? 誰の事だろう…


青い男「じゃ」


そんな事を思惑しているという事も意に介さず、彼はを握り、バイクを走らせ、深夜の闇に消えた。


雄一「また…! どこかで」


それは、本人に聞こえたかはわからない。

だが、伝えたかったその言葉を投げられた。

その、自分の行為は、意味の在るものだと実感した。

静か過ぎた雰囲気は無くなり、師走の喧噪が遠くに聞た。

自分は、戻ってきたのだ。

この日常に。

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