獣人達が住む世界に転生したけど・・・え? 僕も鳥人として転生するんですか?

風利猫

序章 自分、転生しました。

僕の名前は伊勢 北斗いせ ほくと

 この春から動物介護学校の新入生になる15歳だ。

 

 僕は動物が大好きだ。 幼い頃に動物園に連れて行ってもらってその魅力にどっぷりと浸って、そんな想いから将来の夢も動物医療に進もうと思っている。

 

 犬や猫に感じる毛並みや鳥達の羽根の感触、ハムスターやリスなどのあどけない表情、 イルカやアザラシなどの躍動感溢れる仕草など、動物のありとあらゆる表情や触感を感じたい。 それが僕という人間だ。

 

 いよいよ明日が入学式、たくさん動物の事を学んで、色んな動物と触れ合っちゃうぞ!

 

 そう思ってたのに・・・なのに・・・

 

 なんで前日で! 車に引かれきゃうんだよ! しかも完全に轢き逃げだし・・・ 速度からしてかなり酔っ払ってたんだろうなぁ・・・

 

 というのが、死んだ後に天界で見た、今の光景だった。


「正直一瞬の事だったし、こうして我々が拾ってあげられることって滅多に無い事・・・って聞いてる?」

 

 多分神様なんだろうけど、そんな言葉は耳には入らない。 動物だって死は訪れる。 だけど、その死に立ち会う前に自分が死んでしまっては元も子もないじゃないか!


「君は夢を追いかける少年だった。 だがここでその夢を途絶えさせるのはとてももったいない事だと我々も感じる。」

「そこでなのだが、君の夢に応じた世界へと生まれ変わらせようと思っている。 どうかね?」

 

 その言葉を聞いて「ガバッ」と神様達の方を向く。


「その話、本当ですか?」

「嘘をついていたら神様なんてやってないよ。 どんな世界に飛びたい?」

 

 そう聞かれたら、言えることはただ一つだった。


「僕は動物を愛してやまないです。 なので動物がたくさんいる世界とかに飛ばしてくれる事が本望です。」

「やたら具体的だとは思うけれど・・・ そんな世界なんていくらでもあるよ?」

「僕の動物愛に比べればそんなものは些細なものです!」

 

 神様にそう告げると、驚いた表情をした後に「やれやれ」といった様子で首を振る。


「意外と欲が無いんだね。 いや、ある意味では欲望丸出しなんだけど。 まあせっかくだし君の要望に応えつつ、面白い世界に転生させてあげよう。」

 

 そう言って神様 (そういえば名前を聞いていなかったな)が眩い光を放って目を開けてられないほどに眩しい光に包まれて次に目を開けると周りは森に包まれていた。 実感は湧かないが異世界に来た、ということなのだろうか?

 

 しかし森の中に来たのは有難い。 なぜなら野生動物を、本能のままの彼らを真っ向から見ることが出来るからだ。

 

 動物園にで飼われている動物達も悪くは無いのだが、やはり動物そのものをみるならば躍動的で活発的な野生の方がワクワクする。

 

 そう思い森の中をかけようとした時に、手足に違和感を感じた。 なんというか動かしづらいのだ。 なんでかと腕を見ると直ぐに分かった。

 

 自分の腕だった部分に翼が出来ていたのだ。 しかし普通の鳥のように腕の部分全てが翼になっているのではなく、手の部分があり、腕を曲げても決して邪魔にならない。

 

 また足の部分は鉤爪になっていて、脛辺りまでは鳥の脚で、それより上は人間のような脚になっていた。


「な・・・なんじゃこりゃー!!!」

 

 驚くのも無理もない。 だって自分が鳥のような生物になっていたのだから。

 

 そんな大声を挙げた瞬間、目の前に本が舞い降りた。 手はあるためそれを手に取り、本を開いていく。

 

 最初のページにはこう書かれていた。


「異世界転生おめでとう。 その姿に驚いてる様だったからとりあえず説明するね。 君の今いる世界では人間は種族としてまず存在していない。 その代わりに「獣人」と呼ばれる、簡単に言えば動物が人間化したような種族がたくさんいる世界に転生させてもらったよ。」

 

 て事はあれですか。 異世界名物「ケモ耳っ娘」が存在する訳ですか! それはそれである意味テンション上がる! 周りの友人からは賛否両論だったからなぁ。


「だから君もその世界に馴染めるように、君自身も獣人化させておいたよ。 それ相応の格好になってると思うから、次のページの鏡で確認してみなよ。」

 

 そう書かれ、次のページの鏡を見る。 前の世界での自分の髪型はどちらかと言えば前髪がだらんとしているような感じだったのだが、この世界に馴染むためか、自分が鳥人になったからなのか、髪型がオールバックになっていた。 ちなみに髪色は黒のままだった。

 

 自分の新たな姿を確認した後次のページに映る


「ちなみに「獣人」と一言で言っているけれど、細かく分けられているからそれも説明しておくね。 この世界では動物と人との配合率によって形が変わってくる。 まず動物によって君のような「鳥人」と呼ばれるものや「猫人」と呼ばれるものがいる。 そして顔が人寄りなのが「獣人」、動物寄りなのが「人獣」になる。 それにこの世界には動物以外もいるってことも忘れないで欲しい。 最後に君は絶対にないとは思うけど、差別すると実質死刑だから動物差別だけはしないでね?」

 

 重罪ですなぁ。 まあ神様の言う通り、そんなことしないですがね。


「じゃあ、僕らは君の活躍を楽しみにしてるよ。 頑張ってね。」

 

 そう綴り終わると次のページには地図が表記されて、現在地を赤点で示している。


「とはいえどうやって生き抜くか・・・ とりあえず街が近いみたいだからそこを目指すか。 この世界の猛獣とかも動物だったりするのかな?」

 

 そんな緊迫感の無いことを言っていると、急にお腹がなり始めた。


「行く前に腹ごしらえからかな? その辺に何かないかな?」

 

 そう言って周りを見渡す。 森の中なので木の実の一つや二つあってもおかしくはないと思うのだが・・・ と言うよりも今僕はどのくらいの距離が見えているのだろう? 周りの木だけじゃなく、かなり遠くの木まで見えてるって視力どうなってるんだろうか? 視野まで鳥化してる様だ。 結構遠くまで見れるとなると鷹や鷲のような猛禽類と同じくらいなのだろうか?


「・・・あ、見つけた。」

 

 自分の視覚強化に驚いていると、一つの木に実っていた大きめの木の実を発見した。 その木まで近づいてみたのだが、どうやらかなりの大木のようで、かなり高いところに木の実がなっていた。


「うーん、どうしようかな? 飛んで届くかな?」

 

 鳥人になったということで羽根を使っての移動も考えてはいた。 それの試験運用として、まずは飛ぶ所から始めようと思ったのだ。

 

 腕を大きく広げ、上から下に思いっきり振る。 すると目標の木の実までの高さに届いた。 そのまま一つ木の実を千切り、口にする。 ここが嘴のようになっていなくて良かった。


「・・・うん、美味しい!」

 

 梨のようにシャキシャキしていて、それでいてみずみずしい果汁が口の中いっぱいに広がる。 もちろんこれだけでは足りないだろうと思ってもう一度取りに行こうとした時に、


「・・・う・・・ぁ・・・」

 

 そう言って木々の間から現れた、白い毛並みに立ち耳がぴょこんと立っていて、よく見るとボサボサになっていたが、白い尻尾が見えた。 顔が人よりなので「獣人」側なのだろう。


「って分析してる場合じゃないよ! だ、大丈夫?」

 

 そう言ってその獣人に駆け寄る。 するとその獣人は弱々しく顔を上げて、こう言った。


「・・・そ、それ・・・私にも・・・分けて・・・」

 

 その言葉にカクッとした。 ただ腹ぺこだっただけなのね! しかしそこて見捨てるような事が出来ようか。 否、そんな事が出来ようか!

 

 とりあえず半分食べ駆けの果実を渡して、先程の果実を二つ程もぎ取ってきて、更に一つ渡すと、元気を取り戻したようで、満足したような顔になっていた。


「いやぁごめんなさい。 次の街まで行こうと思ってたんだけど、ろくなもの食べれてなくて飢え死にするところだったよ。」

 

 そう目の前の獣人は語る。 透き通った眼に犬歯がちらりと見える。 ご満悦なのか耳も尻尾もピコピコフリフリしている。 そしてなによりも女の子だった。 リアルケモっ娘で内心テンション上がりまくっております。


「ごめんなさい。 自己紹介がまだだった。 私はローラン、白狼の獣人よ。」

 

 おお! 白狼とな! 神話とかでしか聞かなかったけれどここでケモっ娘として会えるとは!


「そう言えばあなたの名前は? 恩人の名前を聞かないのはおかしいから。」

 

 名前・・・名前か・・・この世界らしい名前がいいのかな? いや、多分大丈夫だよね。


「僕の名前は北斗。 北斗だよ。」

「ホクト・・・さん? 君? 歳を聞いてもいいかな?」

「僕は15歳だよ。」

「じゃあ同い歳だね。 そうだ。 さっきも言ったけど、私これから街に行こうと思ってるんだけど、もし行き先が被ってるなら一緒に行かない?」

「いいよ。 僕も街に行きたかった所なんだ。」

「やった! それじゃあレッツゴー!」

 

 こうして僕 伊勢 北斗の異世界での日常と冒険の幕開けになった。

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獣人達が住む世界に転生したけど・・・え? 僕も鳥人として転生するんですか? 風利猫 @o_tamuuindo

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