第3話「JK、珍味を食す①」

 キーンコーンカーンコーンと授業の終わりを告げる予鈴が鳴る。

 山口里奈は机にマイ枕を置き、顔を枕につけて、よだれを垂らしていた。

「ZZZ」


「……のよ……いい……」


「むにゃむにゃ、もっと食べたいよ。みのりーん」


「もういい加減起きるのかしら!いつまで寝ているのよ」

 田口実里は思いっきり山口里奈の机にあった枕を引っこ抜いた。


「痛い!え?もう朝?え?え?」


「いつまで寝ているのかしら。あんた、一限の授業からずっと今まで寝てたのよ」


「え?あたしが今まで食べていた料理は?外はカリカリ、中はふわっとのあの料理は?」


「たこ焼きのことかしら。そんな事より、今から学校を抜け出すのよ。昼の間しか時間はないのよ」


 山口里奈はチラリと時計を見る。時計の表示は正午を示していた。


「え?今昼休み?あ、あれーーーーー」


 田口実里は山口里奈の手を引っ張り、座っていた椅子から強制的に立ち上げられた。


「もうみのりんは強引だねー。何かいいことでもあったのかい?」


 山口里奈は頬を赤らめ、照れた雰囲気を見せながら、引っ張られた手と逆に手で後ろの頭を掻く。


「違うのよ。急いでいるのかしら。早くしないと次の授業に間に合わなくなるのかしら」


 田口実里のギュッと握りしめる手に「はいはい」と答えながら、山口里奈はニヤニヤしながらついていく。


 上履きから外靴に履き替えて、二人はそそくさと学校を抜け出した。


「バレないかな?バレたら一緒に怒られちゃうね」


 山口里奈は田口実里にニヤニヤと笑みを浮かべながら、口を手で押さえながら言う。


「そんなのはバレた時なのよ。それよりここなのよ。ここに目的なものがあるのよ」


 学校を五分ぐらい歩いたところに、田口実里の目的なお店があった。

 そのお店は昭和レトロのようなお店で、昔ながらの看板やポスターがあちらこちらに貼られていた。入口の近くには営業中の札が出ていた。


「ふへー。こんなお店が学校の近くにあるのはびっくりだよ。なんでも知ってるね。みのりんは」


「なによ。その振りは、そんな事より、早く入るのかしら。私たちの残された時間は限りなく少ないのよ」


 田口実里はガラガラと扉を開けると、中に入る。その後ろに山口里奈は付いていく。

 お店の中は外観と同じく、昭和レトロっぽい雰囲気だった。お店内にも昭和初期のポスターや看板がそこらへんに設置されていた。奥には大広間があり、畳が全体に敷き詰められていた。中にはお昼時なだけあって少し人は入っていた。


「なんだか、今の時代からタイムスリップした気分だよ。みのりん、もしこのまま昭和にタイムスリップしたらどうする?」


「そんなわけあるはずないのよ。さあ、店員を呼ぶのよ。すいません!これを下さいなのよ」


 店員を呼びつけて注文を行う田口実里、その姿を見ながら、山口里奈は田口実里に聞く。

「みのりん、今日は何を食べるの?お昼にこんな場所に連れていくってことは美味しい料理なのかな」


「フフフ。秘密なのよ。ぐっさんが驚くようなものだから、喜んでもいいのよ」


 田口実里は不敵な笑みを見ながら、山口里奈の質問に答えた。

「喜んでいいモノ?んー、そんな事言われたら楽しみでしかないわね。ふふ、今日はみのりんに感謝だわ」


「フフフ、感謝するのは当然なのよ。せっかくの抜け出してからのお店なのよ。猛烈に感謝しなさい」


 二人が話している間に、お店の店員がその料理を手に持ってきて二人の机に置いた。

「お待たせいたしました。当店名物、イナゴの佃煮つくだにとライス中、二個お待ちいたしました」


「やっぱり、分かってたよ、ここまでが振りだったてことはね。もー。昼間からとんでもない物を食べさせるわね」

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